名前は、縁側に座って足をぷらぷら揺らしていた。まだ僕に気づいていない。一発で捕まえないとまだ逃げられてしまいかねないから、ゆっくりゆっくり近づいて、小さく名前を呼んだ。

「っあ、佳主馬くん!」

案の定名前はがたりと勢いよく立ち上がり、逃げ出そうとしたので、咄嗟に腕を掴んだ。名前の目はぐるぐるゆれていて、何かの原因で精神が不安定なのは誰の目から見ても明らかだった。

「どうして逃げるの」
「……」
「僕、何か嫌なことした?」

そうたずねると、ぴたりと名前の動きが止まった。やはり、なにかしてしまったのだろうか。そう思うと胸がずきんと痛んだ。無意識に、名前を傷つけてしまうなんて。

「佳主馬くんは…悪くないよ」
「…じゃあ、」
「悪いのは、私、だから…」

余計に意味が分からない。俯く名前を覗き込むと、その目には涙が浮んでいた。

  
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