僕はずっと複雑な気持ちでいた。さっきから名前はわざとなのだろう、僕と目を合わせようとしないし、健二さんに懐いてばっかりでいる。それがどうにも気に入らなかった。今はこんなこと考えている場合じゃないのに、頭はそのことばっかりで、健二さんが「できた!」と叫び、管理棟へのゲートが開いたときにやっと我に返った。

「パスワードを解いた55人の中に、なんとお前は含まれて居ない!」
「えっどういうこと?」
「最後の一字が間違ってまーす!」

画面越しに佐久間さんが健二さんをからかって笑うのも、どこかうわのそらで聞いていた。

事件がひと段落して、皆で夕飯を食べる時、手伝いをしなくちゃならない筈の夏希姉が僕を呼んだ。

「ねえ、佳主馬」
「どうしたの」
「名前ちゃんと何かあった?」

その問に、僕はなんとなく何もいえなかった。

「健二くんが1回逮捕された時にね、名前ちゃん大泣きしちゃってさ。大人しくて大人っぽい子だと思ってたんだけど、なにかあったのかなって思って」

夏希姉が言う言葉は、何気ないようで僕にとって物凄く意味のあることを言っていた。名前が泣いたなんて。一体、どうして。

「夏希姉、ありがとう」
「え、ちょ、佳主馬?」

居ても立っても居られなくなって、夏希姉の質問の返事はせずに、すぐに走って名前を探した。

  
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