「どうなってんのよ!」

遠くで誰かが叫ぶ声がした。同じ家でおこっていることの筈なのに、すごく遠い場所でおこっていることのような気がしてしまう。家が大きいだけじゃなくて、もっと、この家にいるとどうしてなのかすごく安心できる。蝉の鳴き声と、風で草が揺れる音、遠くで誰かが話す音。全部耳に心地よくて、始めてきた場所なのに懐かしいと感じてしまう。OZの混乱は更に酷くなって、日本国内だけでも数多くの事件が発生している。…ということを典型的な形のラジオが告げていた。それを何も言わずに聞いているおばあちゃんは眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。なんともいえない緊張感に包まれたおばあちゃんの部屋。健二さんが居なくなって、佳主馬くんの傍にも居れなくて、夏希さんは何だか思いつめた表情をしていた。状況を完璧に理解するのにはあたしはまだ子ども過ぎて、ひとりで困惑していたらおばあちゃんに呼ばれてこの部屋まで来た。おばあちゃんはあたしに座布団を出してくれて、そして自分の場所に座ってから、なにも喋ってくれない。ただ、ゆっくりとラジオを聴いていた。まるであたしに聞かせるみたいに。

「名前」

唐突に呼ばれる自分の名前に、背筋を伸ばして返事をすると、おばあちゃんがほんの少し笑った。急に肩の力が抜けていく感じがする。

「なにがどうしてこんなことになってしまっているのか、私にはよくわからない。だけど、このままじゃ死人がでるかもしれないんだね?」
「うえ、はい。もしかしたら…ですけど」

おばあちゃんの目がきらりと光って、あたしはぞくりと身震いした。良い意味で。おばあちゃんなら、きっとなんとかしてくれる。そんな確信が生まれた。

「おまえは、侘助のところに行てくれないかい」
「あたしが…」
「ああ。おまえさんなら大丈夫さ」

おばあちゃんが、あたしの手を両手で握った、しわしわの、細い手だ。だけど、すごく暖かくて、ぞわぞわっと鳥肌が体を駆け上った。

「おまえさんだから、たのんでるんだ」

おばあちゃんは静かに侘助さんの話を始めた。

  
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