しばらく誰も居なくなったテレビの前でうろうろしていると、この広い部屋のテレビから離れた場所に健二さんが皆さんに連れられてやって来たので、わたしはつい反射的に隠れてしまった。その動きでポケットに入っていたイヤホンがすべり落ちる。カシャンと小さな音を立てて落ちたイヤホンを慌てて拾うけど、わたしに気づいた人はいなかったみたいだ。安心して、イヤホンをポケットに戻して、ポケットの中にケータイがないことに気づいた。…取りにいかなきゃ。健二さんたちはまだ話していて、少し内容が着になるけど、納戸に取りにいくことにした。きっと、佳主馬くんもあの人たちと一緒に居るはず。

裸足で冷たい廊下を走ると、殆ど音がしなくて、たまに床の軋む音がする。床の木が足に吸い付くような感じがきもちいい。家のフローリングじゃ絶対に味わえない感覚。そのことに少し気をよくして納戸を覗き込むと、なんとそこには佳主馬くんが居て、まだあたしには気づいてないみたいだ。息を飲んで、佳主馬くんが見てるノートパソコンの画面に目を凝らした。すると、そこにはたくさんの苦情や、スポンサー解約のメール。…佳主馬くん、負けたんだ。そりゃあそうだ。あたしのせいだ。あたしの、

一歩後ずさりすると、床の木がみしりと大きな音を立てて、その音に振り返った佳主馬くんとばっちり目が合ってしまった。

「……名前!」

  
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