OZの混乱は、ケータイで見たときよりも酷いものだった。あんまりパソコンには詳しくないけど、これをみれば犯人がかなり凄い技術をもった、凄く悪い人だって言う事は嫌でもわかる。あたしはきゅうに恐くなって、畳に置いた自分の手をぎゅっと握り締めた。「……、」「!、か、」「…」握った掌を包み込むように褐色の手が重ねられて、びっくりした勢いで後ろに振り返ると佳主馬くんが指を口元に当てて口パクで「静かにして、」と言った。きっとほんのり顔が赤いのは気のせいか、パソコンの光りのせいなんだろうなあ。

「シシシ シ」

どこかで聞いたような笑い声。必死で弁解するケンジさんの視線の先にはおおきな耳をつけたアバター、どうやら彼が犯人らしい。犯人は急に動き出し、健二さんに凄いスピードで向かっていっている。「け、健二さん!」あたしが叫ぶころにはまるでスーパーマンのようなポーズをした犯人さんがケンジさんの顔を殴っていた。ほんらいならそれだけの筈だけど、ケンジさんは明らかにダメージを追っている。

「バトルモード!?エリア限定のはずなのに!」

混乱してしまっている健二さんは反撃するでもなくただ犯人に向かって叫んでいた。どうすればいいかわからなくなってしまったあたしは、ハッと佳主馬のほうをむいた。キングカズマを操る佳主馬なら…!あたしの視線とその意味に気づいた佳主馬は「ディフェンス!」と珍しく声を荒げた。それでも混乱したままの健二さんに痺れをきらした佳主馬くんは、健二さんからパソコンを奪い取り素早く画面を切り替えた。それと同時に健二さんのアバターが画面から消える。犯人があたりを伺っているうちにキングカズマがログインして、後ろから犯人を強く殴った。吹き飛ばされてあがる白い煙に、一瞬カズマの姿が隠れた。それがまた、正義のヒーロー登場のようで、あたしの胸は高鳴った。

「…!?」

キングカズマが現れた瞬間に、バッとまわりにいた人ごみから歓声があがる。健二さんは混乱が解けたらしく、キングカズマをじっと見たあと、佳主馬くんに視線をずらした。

「佳主馬くんキミ…キミがキング・カズマ!?」

驚くのも無理はないと思う。あたしは自分の事でもないのに誇らしい気持ちになって、にんまりと笑みをもらした。こんなに気持ちが高まるのはいつぶりだろう。もしかしたら、こんな体験初めてかもしれない。

  
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -