「名前ちゃん」

女の人の、だけども聖美さんのものでもおばあさんのものでもない声がした。もっと若くて綺麗な声。振り返るとセミロングの綺麗な女の人が手まねきしていた。たぶん高校生くらい。手招きしている手と反対の手は人差し指を立たせて口元に当てているので、たぶん静かに来いと言うことだろう。佳主馬くんはOMCに集中していて気づかない。あたしは佳主馬くんの試合の妨げにならないようにそっとお姉さんの方に向かった。ちょっと恐かったけど、ここでうまくやるためにはこれくらいしないといけない。

「名前ちゃん、だよね?」
「は、はい」
「そっかー君があの名前ちゃんかあ」

夜空がよく見える廊下の真ん中で、お姉さんはまずはじめに自らを「夏希」と名乗った。見るからに美人で優しいお姉さんは、どうやら前々からあたしの事を知っていたらしい。監察するようにあたしのことを見て、うんうんと頷く。彼女も陣内家の人なのだろうけど、いったいどうしてあたしに何の用があるんだろう。

「名前ちゃん、来て」
「へ!?」

ぐいっと腕を引かれてさっきから賑やかな声が続いている方へ走り出した。

  
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