「おばあちゃん、これが名前」
「は、はじめまして。名前です」
「佳主馬も名前さんもよく来たね」

陣内家というとっても大きなお家に付いて、あたしと佳主馬くんは荷物を聖美さんに預けておばあさんに挨拶をすることになった。おばあさんは予想以上に優しそうで頼り甲斐のある人で、あたしの事も笑顔で受け入れてくれた。話によるとおばあさんは今年で90歳になるらしい。びっくりだ。

「じゃあ、僕らは納戸にいるから」
「はいよ」
「か、佳主馬くん…?」
「行こう」

佳主馬くんに手を引かれておばあさんの部屋を後にする。出て行き様に小さくお辞儀をするとにっこりと笑顔を返された。きっとここの家の人はみんな笑顔が素敵な人なんだ。聖美さんも、おばあさんも、玄関先であったおばさんも、みんな綺麗な顔で笑う。佳主馬くんは、どんな顔で笑うんだろう。

「名前ってOZする?」
「え?うん、割とする…」

あたしと佳主馬君のにもつは長い長い廊下の先の小さめの和室の中に置いてあった。ここは佳主馬くんの部屋らしく、佳主馬くんは当り前にその部屋に入って行った。荷物の入ったリュックからノートパソコンとヘッドホンを取り出す。あたしもとりあえずケータイだけは出しておく事にした。

「来て」

再び佳主馬君に連れられて歩き出す。こんなに広いのに埃ひとつない家は、お庭もよく手入れされていて、皆に愛されているのがよくわかった。たくさんの朝顔が鉢植えに咲いている廊下を過ぎて、薄暗い物置みたいなところについた。そこにある座布団に佳主馬君は腰掛けて、あたしに隣に座るように促す。薄暗い部屋に膝を着くと、床がひんやりしていて気持ちいい。佳主馬君が手際よくパソコンを起動してイヤホンを差した。あたしはどうすればいいんだろう。

「名前ってさ、OMCとかやる?」
「…よく見るけど、やったりはしない、よ」
「そっか」

どうやら佳主馬君はOMCのプレイヤーらしい。ログイン画面、華麗な指さばきで文字が入力されOZ内に入る。そこに居た佳主馬くんのアバターは長い耳を持っていてその先は茶色、真赤な鋭い瞳の上にはゴーグル、赤いジャケットに見慣れた金のベルト…ということは、

「…佳主馬くんが、キングカズマなの?」
「そうだよ」
「すごい…!」

  
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