体育祭の計画のことを皆に話した次の日から、学校中が突然の体育祭に浮き足立っていた。きっと沖田あたりが触れ回ったんだと思う。あたしの元に一足先に届いた体育祭のしおりをペラペラとめくる。随分とよくできていると思う。あんなぐちゃぐちゃのルーズリーフからよくこんなにボリュームのある近頃の高校生が喜びそうな内容を出したものだ。こんな銀ちゃんの能力をなぜもっといいところで使わないのだろう。この国語準備室の窓際で銀ちゃんは鼻をほじりながら先々週のジャンプに目を通している。

「ねえ、」
「あー?」
「体育祭、楽しみだね」
「そーだな」
「皆楽しんでくれるといいなあ」
「そーだな」
「だから絶対成功させようね!」
「そーだな」

多分、いや恐らく絶対銀ちゃんはあたしの話を聞いていない。あたしがせっかく青春っぽい事をいっているのにそれを聞かない銀ちゃんをちょっと困らせてやろうと思う。

「銀ちゃんは体育祭を成功させるためになんでもしてくれる?」
「そーだな」
「じゃあ、体育祭のメインイベントは国語準備室にあるAVとエロ本の展覧会ね」
「そーだな」
「じゃ、きまり」
「そーだ、な……って、オイィ!?」

やっと意味を理解した銀ちゃんが凄まじい勢いでジャンプから顔をあげた。なんで知ってんだ、と顔に書いてある。残念ながら三年間この国語準備室に通っているあたしには全てお見通しだ。主に銀ちゃんが授業に出ている時間などにこの部屋の隅々まで探索していたのだ。だから山積みにされているジャンプに挟まったエロ本やドラゴンボールのDVDに入っている大人のDVDなどは全てあたしが把握しているのだ。勿論銀ちゃんの趣味も。

「うわ、このオネーサンおっぱいでけえ」
「ちょ、何呼んでんのオオォ!!」

その中でも銀ちゃんのお気に入りの一冊のページをめくると銀ちゃんに引っ手繰られた。銀ちゃんの手は汗ばんでいてきもちわるい。

「見られて困るなら学校持ってこないでよ」
「いや、ね?普通見ないでしょ」
「普通見るでしょ」
「いや、見ないから」

だらだらと冷や汗を垂らす銀ちゃんの姿に、あたしはとうとう耐え切れなくなって笑い出した。銀ちゃんはしばらくポッカーンとしていたけど、自分がからかわれていたのだと気づき急に怒り出した。銀ちゃんは本当におもしろい。こんな銀ちゃんだから、今の3Zがあるんだろうなあ、