「はーっ」
「お疲れ様、お茶飲む?」
「飲む!飲みます!」

相変らずの体育祭に向けてのハイスケジュールに、流石のあたしも疲れてきてしまった。もう授業中に寝ても先生方は何も言わない。きっとあたしの頑張りを認めてくれてるんだ、そうに決まってる。二時間目の予行練習を終えて教室に戻り、勢いよく誰かの席に突っ伏すと山崎くんがあたしのぽっぺに冷たいペットボトルを当てた。それを引ったくるように奪い蓋を開けて飲む。

「おいしい」
「そりゃあ何よりで」
「ありがとう」
「うん。お礼はいいからさ、どいてくんない」

山崎くんの笑顔の種類が変わる。それで十分すずしくなったあたしは大人しく山崎くんの席からどいた。

「土方、山崎くんって、恐いね」
「まあな、」

学校の中で平気で煙草をふかす土方に話しかけてみた。土方は当然のように煙草を携帯灰皿に捨てた。慣れてるなあ

「あさってだな」
「へ?」
「体育祭」

わ す れ て た

そう、たくさんの予行練習の時間を貰ったといってもやっぱり突発的な企画なだけあって、体育祭はもう目前に近づいていたのだ。土方の冷静な言葉にあたしは涼しいを通り越して顔を青くさせてしまった。

「おい、大丈夫か」
「全然だめ…だってパネルもまだできてないみたいだし応援の予行練習も足りてないし、保護者の方への開催の手紙も今日先生方にくばったばっかりだし…どうすれば…どうしよう土方!」
「わかったから、落ち着け」

剣道部と風紀委員は事実上土方がまとめている。流石というか、肝が据わっているというか、落ち着いた声で落ち着けと言われたのであたしはとりあえず落ち着くことにした。

「パネルはあとニス塗れば完成だし応援の予行練習はオメーが寝てる間に俺たちがしてるから大丈夫だ。保護者への手紙なんてあってもなくても生徒達が自ら言うだろ、だから、大丈夫だ」
「ひじかた…」

土方のカリスマ性を垣間見た瞬間だった。