「体育祭をやりまあああす!」
「はあ?」

大きく手を挙げたあたしの声は教室に虚しく響いた。皆は教室のほぼ真ん中の席のあたしのほうを見る。唯一声を挙げた土方でさえ目を丸くしてあたしの方をガン見している。はは、アホ顔。

「ま、そういうことだから、あとはヨロシク」
「ばっちこい銀ちゃん!」

そう言ってあたしは自分の席に立った。国語の教科書やノートがぐしゃりと音を立てる。あ、やばこの教科書山崎くんに借りたやつだ。山崎君は信じられないような顔をしてあたしの足元を見た。

「ちょ、俺の教科書オオォォォ!!」
「3Z主催で、体育祭をやります!」
「体育祭!?楽しそうアルな!」

いかにもそういうのが好きそうな神楽ちゃんがノッってきた。よし、つかみはいいな。

「中心は銀ちゃんとあたし!皆には実行委員をしてもらいたいと思います!」
「実行委員ってどんな?」
「お、いい質問だ!例えば山崎くんと新八くんに用具の手伝いしてもらったり、土方や沖田とか風紀委員に会場のとりしまりをしてほしい!」
「ちょ、俺も風紀委員なんだけど」
「気にすんじゃない山崎くん!」
「急だなオイ」
「そのかわり、手伝ってくれた人にはイイモノをプレゼントしまあす!」
「イイモノってなんなんでェ」
「手伝ってくれたら教えてあげるー」

なんだかんだ言ってみんなノリ気じゃん。その日の国語の授業は珍しくみんなマジメに黒板に目を向けていた。

「騎馬戦は全校でやりたい!」
「選抜駅伝もしようぜ」
「パン食い競争は外せないアル!」
「リレーもしなきゃね!」
「借り物競争!」「綱引き!」「二人三脚!」

楽しい体育祭になりそう!みんなのアイデアをルーズリーフに書き取りながら来る体育祭の日を思い浮かべた。