午後の河川敷は暖かい日差しをいっぱいに受けた草達が風にゆられてとても気持ちの良い空間だった。いつものこの時間はマリアさんの仕事を手伝っている時間だから、いつもあたしはこの空気を感じている。日よけ用のつばの大きいぼうしは牧場に置いたままなので、なるべく日に焼けたくなくてシスターの後ろを歩く。背の高いシスターは女子の中でも背が高いわたしをすっぽり隠してしまうから、あたしはシスターの近くにいると凄く安心する。嬉しい。

「お、シスターじゃねえか」
「む…星か」

ぴた、とシスターが歩みを止めて、声をかけた人のいるほうを向く。その人はシスターに隠れたわたしに気づいているのかいないのか、どんどんこっちに近づいてくる。それに比例してあたしの心臓はどくんどくん煩く鳴る。シスターの服を握るとシスターが小さく動いたので、きっと気を使ってくれているのだろう。

「…名前ちゃん?」

星のマスクを被った星さんに気を取られているうちに、少し距離のあるところから野菜を育てているというP子さんがわたしに気づいた。優しくわたしを呼んでくれる声に、ほんの少しだけ取り乱さないで済んだ。気づけばシスターの周りにはたくさんの人がいる。星さんとリクルートさんがなにやらもめているし、P子さんの隣にいたニノさんもわたしのほうを見ている。シスターの黒い修道服に隠れるように身を縮めても、あたしの身長はどうにもならない。死にそうになっているわたしは、無意識にシスターの大きな小指を握った。

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