教会の懺悔室で体育座りしていると、ぎい、とドアが鳴った。上を向くこともせずシスターの気配を感じていると、ふわっと抱きしめられた。女性らしい体つきに体が硬直する。シスターじゃない。じゃ、じゃあ、誰。知らない人に触れられただけでわたしはこんなに恐くなる、悲しくなる。謝りたいきもちになる

「名前」
「マリア、さん」

優しく名前を囁かれて、わたしの心臓はひとまず煩くなり響くことをやめる。ゆっくり落ち着いてきて、ほっと肩を落とした。よかった。マリアさんで、よかった。

「ごめんなさい」
「え…、」

マリアさんが急に謝ってくる。やだやだ、謝るのはわたしのほうなのに。謝らないで。お願い。わたしの言いたいことは全部のどにつっかえて出てこない。

「恐かったのよね」
「…ま、りあさん」
「名前、」

ぎゅ、と抱きしめる力が強くなる。マリアさんに背を向けている状態のあたしはそれに応えることができない。マリアさんの言葉がゆっくりゆっくりわたしを包み込んでいく。

「…マリア」
「暫く名前のことお願い」
「…ああ」


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