シスター以外の人とあまり関わりのないわたしは、牧場からゆっくりゆっくりと歩を進めた。足は朝露のついた草に触れてしっとりと湿っている。パンプスに視線を落としながらゆっくりと歩く。できれば一番にシスターが気づいてくれないかな、と考えながら。わたしがここに来たのは、いわば偶然だった。ある国に捕まえられていたわたしを助けてくれたのがシスター。わたしを逃がしてここで生活しようともちかけてくれたのがマリアさん。ふたりともわたしの命の恩人だ。そのふたりが仲良くしてくれないのは、ちょっと寂しい。

「名前じゃん」
「あ、」
「どうしたんだ?珍しいな」
「あの」

村長さんに話しかけられて、何も喋れなくなってしまう。シスターとマリアさん以外の人と話すのは凄く苦手だ。苦手、というよりも恐いのかもしれない。こんなに背が高いくせに、気が小さくて、かっこ悪い。

「教会にいてくれ」
「シスター…うん」

マリアさんよりも2センチ背が高いわたしは、その身長がコンプレックスになっている。逢う人会う人、みんなわたしに「背が高いね」と言う。「羨ましい」とも言う。こんなの、なんにも良くない。目立つし、女っぽくないってからかわれるし、すごく嫌だ。ここに居る人からもそう言われてしまいそうで、話すのが恐い。教会に向かう中でも、みんなの視線が痛かった。痛くていたくて、泣きたくなった。

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