「…あ」
「え?」
「夕飯が冷める」

名前が黙って大人しくしているのをいいことに、俺は暫く名前の少し低い肩に額をあずけたままじっとしていた。何故か妙に落ち着くのだ。

「晩御飯?佳主馬がつくったの?」
「そうだけど…」
「そっかー私どうせ休んだからつくろうと思ってたのに」
「いいよ、別に」
「メニューは?」
「肉じゃが」
「ふうん」

名前の声は少し嬉しそうだった。俺の気分も少し向上する。

「肉じゃが好き?」
「うん、すき」
「ぼくも」
「…ぼく?」
「…あ」

恥ずかしい。昔の一人称が出るのは安心した時だけなのに。
きょとんとした顔の名前にそのことを教えたら、彼女は一体どんな顔をするんだろう。
きっと恥ずかしそうにして、可愛いことを言うんだろう。

「名前が来てから大変なことばっかりだけど」
「う…ごめん」
「話は最後まで聞いてよ。大変だけどね、楽しいんだ」
「…本当に?」
「ほんとに」
「そっか…その、佳主馬」
「うん」
「ありがとう」

ちゅ、と
思わず僕は名前にキスをした。

「え」
「あ…ゴメン」


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