「えーっ佳主馬にそんな過去が!?」
「そうだよー、あの時なんかさ、もう凄かったんだから」
「それってなんかの冗談とかじゃなくて?」
「本当だってば、もうすぐ夏希さんが帰ってくるから、そしたら夏希さんにも聞いてみなよ」
「そこまで言うなら本当なのか…」
「だから言ってるじゃん」

健二さんがまた笑う。健二さんの夏希さんの呼び方が、先輩からさん付けに変わっていることに気付いた。そっか、もう先輩後輩の間柄じゃないんだ。

「健二さんとこうして話すのって、考えてみればふたりの結婚式の時振りかもね」
「あー…そうだね、2年振りくらい?」
「そうそう。あの時健二さん終始緊張しててさ…凄くおかしかった」
「え、ええー?」

時間が経つのを忘れてしまうほど長い間話し込んで、午後になってしまった。途中から夏希さんも参加して、OZを経由してかなり話し込んでしまった。

「だから、そこは翔太兄が…」
「えー?健二さんじゃなかったっけ?」
「違うよそこは師匠がどーんと行ったんだよ」

ほとんど陣内家の話だ。あの家には数え切れないくらいの思い出がある。だけど私が触れたのはそのほんの一部で、健二さんの「あれ?この時は名前ちゃんいなかったんだっけ」なんて言葉を聞くたびになんとなく切なくなる。

「そういえばさ、なんで今まで名前ちゃんのこと登録してなかったんだろ」
「きっとなんとなくタイミングがつかなかったんだよね。」
「もう登録したから大丈夫。」
「あ、じゃあそろそろ夕飯の買い物に行かないといけないから」
「はーい健二さん、夏希さん、ばいばい」
「じゃあね」

通信が切れる。そのまま慣れた手つきでノートパソコンの電源を切る。
そろそろ佳主馬が帰ってくる。どうしようかな、外には出られないわけだから、お風呂でも洗おうか。

その前に着替えないと。…つまり私はパジャマのまま健二さんや夏希さんとおしゃべりしていたと言うのか。なんていうことだ。
自分の失態に後悔しつつ、寝室に戻る。適当にラフな服に着替えてベットに沈む。おなかすいた…。だけど勝手に冷蔵庫を漁るのはどうかと思うし、なんだか佳主馬は料理が好きみたいだから帰ってくるまで我慢しよう。ああ、そうだ。お風呂掃除。

そう思いつつ、私は何故か眠りの世界に引き込まれていった。


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