「名前っ」

電話が掛かってきて10分程度で佳主馬が来た。ケータイと二重の声が私の耳に響く。立ち上がって佳主馬の方を向いて、手を振ると佳主馬くんは乗っていた自転車をその場に倒して私に駆け寄ってきた。私の目の前で膝に手をついて息を整えている佳主馬を見ると、本当に助かったと思った。不安はとれたけど、安心はできていなかった。洪水みたいに私に流れ込んでくる安心感に、さっきとは違う涙を浮かべずにはいられなかった。

「ごめん、佳主馬。あたし…」
「いいよ、僕の方こそごめん。僕が名前を迎えにいけばよかったんだ」

息を整えて背筋を伸ばした佳主馬に、そのまま抱きしめられる。凄くびっくりしたけど、暖かい。そのまましばらく、私は佳主馬の腕の中でなきじゃくっていた。


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