このまましゃがんでいても状況はなにも変わらない。だけど足は歩きすぎて痛いし、これ以上迷ってしまうのも避けたい。そろそろ本当に泣いてしまいそうになった時、まるでタイミングをはかったかのようにケータイが鳴った。お母さんからだ。「もしもし、どうしたの。お母さん」「あんた今どこにいるの?佳主馬くんが探してるって」やっぱり、迷惑をかけてしまっていたんだ。「私、今どこにいるかわからない」「…やっぱり」電話越しにお母さんが溜息を吐く音が聞える。「…あの、お母さん」「いいのいいの、あんたが方向音痴なのはわかってるから。佳主馬くんにあなたの電話番号教えていい?」「え…それは、いいけど」「そう、じゃあね」お母さんはまるで捲くし立てるみたいに電話を切った。今度は私が深い溜息を吐く。どうして私って…こんなにダメなんだろう。佳主馬くんに迷惑かけっぱなしじゃないか。冷え切ってしまった指で、自分の目元を冷やす。こんなに長い間外にいたのに、どうして目頭は熱いんだろう。どうしても、涙が止まらない。
嗚咽を洩らしそうになりながら、うずくまって泣いていると、またケータイが鳴った。きっと佳主馬だ。涙を拭って、深呼吸してから通話ボタンを押した。すぐに切羽詰ったような佳主馬くんの声が聞える。

「名前!?どこにいるの!」
「えと…よくわかんない、けど、住宅街にいる」
「目印になるようなものは?」
「うーん…すぐそこに公園がある。割と大きい公園」
「わかった。すぐ行くから、通話は切らないで」
「う、ん」

なんだか凄く安心する。佳主馬が来てくれるって思うと、今までの不安な思いも全て忘れられてしまう自分に驚いた。


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