そんなに歩いたりしてないからきっと割りとあのマンションは近くにあるんだろう。多分。しかし今のわたしにはマンションどころか学校…いや、あのカフェの場所さえわからない。夏帆ちゃんも南ちゃんももう見えないほど遠くに行ってしまった。これは…この年になって迷子になるなんて…。でも名古屋に来てからさして時間は経ってない訳で、この辺の地理に詳しくないから、迷子になっても仕方ないよね。うん。決して、私が方向音痴だからとかじゃないよね。今全然意味のわからない住宅街にいるのも、地理に詳しくないから、だよね!そうに決まってる!

「………」

とりあえずこれ以上歩くのは辞めようと思い、路地にうずくまった。なんか…虚しい。ひとりでこんな所に座り込んでいるせいか、さっきまでは気にならなかった寒さがびしびし私を刺してくる。なんて惨め。意味もなくケータイを開いてみても、OZのアプリにはノーカスタムのアバターが工事現場のおじさんみたいなヘルメットを被って「只今メンテナンス中につき、OZはご利用いただけません」と深々とお辞儀している。生憎佳主馬の本当のアドレスは知らない。て言うかお母さんとお父さんのアドレスしか入ってない。みんなOZで済ましてたから。

「……」

通りかかる人たちが制服を着てこんな所で惨めにうずくまっている私を白い目で見ていく。寒い。ちょっと大きい佳主馬のカーディガンをぎゅっと握って寒さをしのごうとしても、もう指先なんてカチンコチンだ。本当にこのまま帰れなかったらどうしよう。そんな考えが脳裏を過ぎる。

「かずまあ…」

返事なんて、勿論ない。


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