やばい。本当に、堪えた自分を褒め讃えたい。悪気はなかったんだ。ただ、俺と一緒にいるのに意識が他に移るのが嫌で、名前は、それを俺が怒ってるって言う風に受け取ったんだ。きっと。きっと学校初日で緊張したりもしたんだろう。名前と他の男が話したりするのを見たくなくて、ずっと傍にいようと思ったけど、そしたら名前の友達ができなくて、愚かな自分を呪ってしまいたかった。
下校時に俺に見せたはにかむような笑顔。名前のクリームパスタ。きれいで透明な、僕にだけ見せた涙。
全部、ひとりじめしたい。本当に、俺は成長していない。5年まえもそうだった。本当は名前をずっとそばにおいておきたくて、でもそんなこと言えなくて。その点からみれば、俺は少し素直になったんだろう。溜息を吐いて、食器棚を閉じた。名前が崩れるように眠って、俺は少し安心したんだ。今はゆっくり休んで、明日には涙なんか忘れて、いつもの笑顔を見せて欲しい。涙だってきれいだけど、名前には絶対に笑顔のほうが似合ってる。
「…すき」
はっと口に手を当てる頃にはもう遅く、やっぱり俺は、僕は名前が好きなんだと実感する。本当に、どうしようもないほど。
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