あたしは成長してない。ちっとも、全然成長してない。あたしだけ、あの時、佳主馬と別れたときのままだ。くやしい。どんな思いよりも先に、くやしいきもちが溢れてきた。

「…名前」
「え?」
「どうしたの、そんな顔して」

佳主馬が心配そうにあたしの顔を覗きこんだ。…また、だ。また、佳主馬を心配させてる、あたし。やっぱり、まだまだなんだ。佳主馬は一瞬ぎょっとした顔をして、きっとあたしを安心させるためなんだろう。やさしく笑った。佳主馬は変わった。前よりも優しくなった。大人になった。同い年なのに、あたしの未熟さも全部ゆるしてくれる。笑ってくれる。佳主馬に、頼ってばっかりで、情けない。佳主馬に指で涙を払われて、あたしはとりあえず、ぎこちないながらも笑ってみた。そしたら佳主馬も本当に嬉しそうに笑うから、また目がじわりと熱くなった。

「名前、もう寝よう」
「…でも」
「いいこだから」

佳主馬に背中を優しく叩かれて、どうしてなのか簡単に意識は闇に解けていった。


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