体育が終って暫く、あたしはぐずぐずと泣いていた。まさか今日二度目の女子との会話が大量の「ごめんね」だなんて。我ながら不憫すぎる。結局体育の授業は潰してしまったし、初日からどうしてあたしはこうなんだ。ずず、と鼻をすするといい加減鼻が痛い。放課後の誰もいない教室にあたしと佳主馬は自分の席に座っていた。遠くから部活中の人たちの声が聞える。
「ごめん」
「…なにが?」
俯いてる佳主馬がボソっと呟いた。小さい声だったけど静かな教室ではよく響いて、なんの障壁もなくあたしの耳に届いた。その言葉の意味に首をかしげると、佳主馬は急に頭をあげてこっちを見、あたしの二の腕をぎゅっと掴んだ。
「だって!だって…」
「佳主馬…?」
あまりの迫力にあたしは驚いてしまったけど、ハッとした佳主馬が再び力をなくして項垂れるころにやっと佳主馬が取り乱してる理由に気づいた。一回理解してしまえばそれがとても可愛く思えるもので、いつもはクールを装っている佳主馬が仄かに顔を赤くして取り乱すというのは何というか可愛い。にやけたくなる衝動をどうにか抑えてあたしは佳主馬の指先を握った。冷たい指だ
「佳主馬、ありがとう」
「何言って…」
「ね、帰ろう」
佳主馬はきっと自分が勢いよく更衣室の扉を開けたことに罪悪感を抱いていて、あたしがこんなにくずってるからそれが更に増して、なかなか声がかけづらかったんじゃないかと思う。佳主馬にこんな思いさせちゃうんだったら、もっと早く泣き止めばよかった。はじめは訳がわからないといった顔をしていたけど、佳主馬も静かにあたしについてきた
「だから、玄関そっちじゃないってば」
「え」
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