「う、うえっ」

声を抑えたくても勝手に嗚咽が漏れる。どうしよう、いきなり泣かれたら女子達もきっと困ってしまうだろう。後ろの人たちは焦ったような声でざわついている。ほらあ、やっぱり。そりゃあそうだろうけどさ。キーンコーンカーンコーン。無情にも始業のチャイムが鳴ってしまった。なかなか女子が現れないことに痺れを切らしたのか、多くの男子の声とドアをノックする音が聞える。なんだか可愛らしい女子が小さくドアを開けて事情を説明しているらしい。ああ、やめて。男子にまでこんな恥ずかしい状況教えないで。あたしはスカートにブラという恥ずかしいにも程がある状態で硬直している。もういいや、うん、とりあえず制服着よう

「…名前!」

ドアが壊れてしまうんじゃないだろうかというほど大きな音がした。振り返ると佳主馬がいて、なんだか切羽詰った顔をしている。…と思ったらいきなり顔を赤くして更衣室から出て行ってしまった。意味が分からない。暫くポカンとしていると、ハキハキした感じの女子が「とりあえず、制服着なさいよ。ジャージないんでしょ?」と言ってあたしの頭はようやく機能しはじめた。どうやらジャージがないことはばれているらしい。

「あたしは夏帆、よろしく」
「は、はあ…」


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