「何食べたい?」
「なんでもいい」
「じゃあ適当に作るけど」
「…あたしも手伝う」

佳主馬が黒いエプロンをつけて台所に立っている。片手にフライ返しを持っている。毛片手にはにんじんを握っている。…これを見て、なんとも思わない人がどこにいるだろうか。しかし本人はなんとも思ってないみたいでふきだしそうになってるあたしを不審な目で見ている。ここで佳主馬の後姿を見ているのは、アレだ、危険だ。なのであたしは手伝うことにした。そうすれば距離が近くなるから佳主馬のエプロン姿を見ないで住む…だけど佳主馬が料理するというありえないことを至近距離で見るということになってしまう。だけど料理は両親が居ない時に自分で作ったりしてるから結構自信がある。調理実習の時も友達に凄いって褒められたし。佳主馬にいいところを見せるチャンスかもしれない!顔が勝手にニヤニヤしてきて、佳主馬はムッと顔を顰めて「じゃあこれつけて」とあたしに白いエプロンを投げた。どうやら佳主馬の黒いエプロンの予備らしい。くそ、笑いそう

「…か、佳主馬、普段から料理するんだ?」
「まあね、カップ麺とか苦手だし」
「へ、へぇ」

カップ麺とか苦手な人いるんだ…。確かに佳主馬は好き嫌いが激しそうだし、ああいうレトルト的なものもあんまり好きじゃなさそう。エプロンをつけて手を洗い、台所に立ったはいいものの、何をすればいいかわからない。ちらりと佳主馬に目をやると包丁で上手ににんじんの皮をむいている。キング・カズマがにんじん…くそ、また笑いそう。

「カレー作るから、玉ねぎ切って」
「あ、うん」

少し広い台所は二人で作業するのに丁度いい。流しでにんじんを剥いている佳主馬の横でまな板を広げる。玉ねぎの外の皮を剥いて、半分に切って、そこから細かく…。

「う…」
「ん?」
「な、涙が…」
「あー…、擦っちゃだめ」

目元を擦るあたしの指が佳主馬の指に取られる。あたしの手を払った後に佳主馬の指が目元を這う。涙を掬う指の動きがぞわぞわする。薄く目を開くと至近距離に佳主馬の顔。真剣そうな顔で、再び目を閉じる。そして手を退かされて、やっと目を開いた。

「…やっぱりたまねぎは俺が切るから」
「え?でも」
「名前はそっちの台でにんじん切って」
「……」

皮を剥かれたにんじんがクッキングヒーターの横に転がっている。たまねぎ切る程度で泣いてたらダメかな。ちょっと落ち込んだ。



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