「…だいたい、こんなもんかな」
「ごめんね、全部買わせちゃって」
「いいよ、別に」

しれっとした顔で佳主馬が言う。優しかったり、ツンとしたり。佳主馬がよく解らない。いや、でも前はもっとわかんなかった。佳主馬はおとなっぽくなった。それだけは解る。

「…で、このあたりの道は覚えた?」
「え?ああ、うん…」
「まだ、ね」
「ごめん…」
「いいよ」

いろんなものを買った。白くて可愛いスリッパ、あたしの分の食器、歯ブラシ、キングカズマファンブック、今日の夕飯、パジャマ、もっとたくさんのもの。お会計をするときの店員さんの笑顔を思い出す。まるでこれから新生活を始めるカップルを見つめるような笑顔にまた恥ずかしくなった。食器は今ある佳主馬の食器となるべく似たようなのを探して買ったし、佳主馬のスリッパは今日あたしが買ったものの黒いやつだったし、キングカズマファンブックは…どうして買ったんだろう。気が付いたらカートに入っていた。パジャマは…ここだけの話、佳主馬が選んだ奴だ。ピンクの可愛いやつ。可愛い、かわいいけど恥ずかしい。

「制服は、明日の朝には届いてると思うよ」
「えっ」
「学校、明日からだってさ」
「そ、っかあ…」

学校、かあ。そういえば前の学校の友達はどうしてるんだろうか。勝手にいなくなったけど、心配したりしてないだろうか。

「名前、どうしたの」
「へッ!?いや、なんでもない」
「じゃあいいけど」

今は今のことを考えよう。突然のことが多すぎてまだ整理ができてない。パジャマとスリッパが入った紙袋を抱えてマンションを目指す。高く聳え立っているので、あたしでも自力で帰れそうだ。

「名前」
「へ?」
「マンション、そっちじゃない」
「………」

やっぱり、無理でした。


prev
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -