どんどん近づいてくる足音に、
あたしはただ呆然と食堂への入り口を見つめていた。
そして、心成しか慣れたようにあたしの前に姿を現したのはやっぱり

「銀さん…」
「名前…やっと見つけた」

そう言って溜息をつくと銀さんはひょいとあたしを担いだ。
いきなり視界がぐるりと揺れ動いて目が回ってしまって、
状況がよく把握できない。
でもどうやら銀さんは動きだしてるらしい。
そのせいで余計に頭がぐらぐらする

「ちょっと待て」

土方さんの声が聞えた。
それと同時に銀さんが止まった。

「こいつは真選組の客なんだ。置いてけ」
「この子は俺の部下なの。だから連れて帰りますー」

ぐるぐる回る気持ち悪い頭の中、
必死に考えるとどうやら土方さんと銀さんは仲が悪いらしい。
ん?じゃあ知り合いなの?
目が回ってることに付け加え頭を下に降ろしている状態で、
あたしはどんどん何も考えられなくなっていく。
貧血のような症状があたしを襲う。

「兎に角、そいつ顔青いからとりあえず降ろせ」
「え?ああ、ごめん。」

そう言ってやっと銀さんはあたしを降ろした。
だけどあたしは立ってられなくてそのまま近くにあった椅子に座った。
まだ頭がぐらぐらする。
誰かが持ってきてくれた水を喉に押し込んだ。

「名前、大丈夫?」
「は、はあ…なんとか」
「とりあえず、そいつはここに置いとけ」

土方さんの眼力が凄まじい事に、あたしはやっと気が付いた。
銀さんはばつが悪そうに頭を掻いた後、「しゃあねえな」と言って食堂を出て行った。
状況が良く把握できない。

「お前…名前っつたか。今日は屯所に泊まれ」
「はあ…」

銀さんが屯所を後にしたのを確認した土方さんはあたしに向き直った。
まだ頭が正常に機能していないあたしは、曖昧に頷くだけだった。




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