翌日、あたしはよく眠れないまま朝を迎えた。
しばらくボーっとしていたら襖がノックされて
「どうぞ」と言うと遠慮がちにふすまが開いた。

「…土方さん」
「これに着替えろ」
「あ」
「もうすぐ朝メシだから早く食堂に来いよ」

土方さんを見てどくりと昨日の光景を思い出す
とても優しく哀しい目をしていた土方さんの面影は今はない
しかし妙に丁重に着物を扱う手は
どこか仕事人間とは思えない繊細さだった
投げられた着物は見たこともない着物だった
落ち着いた桃色の着物
どうして屯所にこんなものがあるんだろうと不思議に思いながら袖を通す。
ふわりと香る女性らしい匂いはとても軟らかい匂いだった。
まるであたしの心とは大違い
こんな香を纏えるひとになりたいと思った。


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