梢があんなに楽しそうに笑ったりはしゃいだりするのを見るのは、本当に久しぶりだった。やはり病院の中だけでは堅苦しいし、見舞いが俺ひとりだけではやはり梢も寂しかったのだろう。
ふと、教室の中心で笑っている梢を見ると、少し苦しそうだった。ずっと梢を見てたから、こん位解る。梢は嬉しすぎて、ちょっと無理してるみたいだった。邪魔はしたくない、そう思いつつももしかしたらの事を考えると俺の足は自然に梢の方へ向かった。

「はいはいお前ら何してんのー?」
「あ、ぎん」
「なにアル銀ちゃん。今イイトコだったのに」
「梢ちゃん返してくれる?」
「えー?お前いっつもあってんだろ」
「監督責任ってモンがあるんですー」
「……わかった。ぎん、行こう」

おどけて梢を後ろから抱きしめるようにした。そしたら梢の体が異様に冷たくて、ぞくりと背中から嫌な汗がわいた
俺は少ししょんぽりしている梢を横目で伺いながら屋上へ向かう。屋上の冷たい風に頬を撫でられて、少し気分がよくなったのか梢は瞳を閉じて小さく笑んだ。

「ぎん、ありがとう」
「たりめーだろ」

屋上の縁のほうへ歩き出す梢。その姿がなんだか俺の手の届かないところへ行ってしまうかのようで、思わず手を差し伸べた。はっとして手を降ろす。なんてこと考えてんだ、これは俺の考えすぎだ。

「あたし、」

そう洩らすように呟いた梢の方がわなないた。そのまま梢の体は地べたに崩れてしまった。俺は慌てて梢の方に向かった

「あたし、いつまでこうしていられるのかな…ッ」

肩に乗せようとした手が、凍ったみたいに動かなくなった。触れてしまえば俺の体温で梢を溶かしてしまいそうだった。
強い風がふき、目下に見える木々がざわざわとわななく。それと同じように震える梢の両肩に、そっと手を乗せた。大丈夫、溶けてない。梢はまだ、ここにいる

「梢」

名前を呼ぶと、梢は小さくしゃくりあげた。ちらりと見えた涙は場に似合わないくらい風情的で、とんでもないくらい奇麗だった。


涙が僕を責めている

代わってあげることが出来たら、なんてありきたりな表現しか浮ばないけど、本当に俺は

お前を




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