「そうご、」
「有菜」
「あたし、ね」

自分でも驚くほど弱々しい声しか出てこない。でもこれがあたしの精一杯で、限界だ。そして気が付いた。あたしは余りにも浅く、弱く、欲張りな人間だったんだ。

「もう、部活やめる」
「おまえ、」
「でもね、教室に行くのは、恐い」

また十四郎みたいな人に会ってしまうかもしれない。恐い。知らない人の中に放り込まれるのは、とてつもなく恐い。総悟から離れたくない。

「じゃあ、3Z来いよ」
「……」
「土方いるけど、銀八いる」
「うん、」
「俺もいるし、いいやつばっかりだ」
「うん」
「エビマヨサンドは食えなくなるけど」
「ううん、」

あたしは首を振った。あたしと購買のおばちゃんはゆっくりゆっくり打ち解けていって、今では談笑できるほどになった。これは、あたしにとっては凄いこと。

「仲良くなったからね、特別に、とっておいてくれる、って」
「そっか」
「うん」

じゃあ問題ねェ、と総悟はあたしをだきしめたまま笑った。もしかしたら、ほんとうにもしかしたら、あたしは自分であたしの世界を照らすことができるようになるかもしれない。でもきっと凄く時間がかかるだろうし、総悟が必要だ。

「すきだ」
「あたしも」

幽霊生徒じゃなくて、立派な銀校の生徒になれるかな。そう言うと、俺の彼女なんだから当然でさァ、と返ってきた。総悟らしい。総悟に引かれるまま、みつばさんのベットに沈み込む。そこはゆっくりと、そこはかとなく自然にあたしが笑える場所。



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