みつばさんのお葬式は、静かに、ゆるやかに、そこはかとなく自然に行われた。きっとそれがみつばさんの望む形だったと思うし、金銭的にも余裕は無かった。学校を休んだにも関わらず制服を来たあたしと総悟は、家に帰りその状況をゆっくりと理解していった。みつばさんが最期に割ったお皿はそのままだったし、つくりかけだった夕食は腐ってしまっている。あたしはそのまま食器を片付け、異臭を放つなべを水に浸した。そして、ゆっくりとみつばさんの部屋に足をふみ入れる。しずかな、木々に遮られた日光がやわく部屋を照らしている部屋。それはどこか部室を連想させた。みつばさんは、あたしの逃げ場だった。正体のつかめないゆるゆるとした痛みが頭を包み込む。じわり、と瞳がうるんだ。でもあといっぽのところで涙は出ない。みつばさんの生活していた部屋を壊したくなくて、ベットに倒れこみたいきもちを堪え、冷たいフローリングにひざをついた。つめたい。そのときのあたしのきもちは、ただただ沈んでいて、まるで世界が終ってしまうような感覚だった。あたしの小さな世界の均衡を保ち、照らしてくれていた存在。総悟という世界の軸に、その世界を守るみつばさん。二人がいないとあたしは生きていけない。そんな気さえした。でも総悟にみつばさんを求めることはできない。きっとあたりより総悟のほうが、

「有菜」
「総悟」

キイ、とドアが鳴って、その付近から聞えたいつもよりも随分とトーンの低い声。でもあたしは振り返ることもせずに、ただ総悟のなまえを言った。とうとう涙があふれ出る。総悟のぬくもりを背中に感じた。だんだんときつくなってくる。明かりの無くなった薄暗い世界、ただぬくもりに埋まって生きていくのも、いいのかもしれない。



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