口の中が熱い。ひりひりとした痛みを伴った熱は水を飲んでもなかなか消えてはくれない。ミツバさんお手製の激辛カレーが入っていたカレー皿を見つめる。この家には割りとよくご飯を食べに来るのであたしの分の皿やお箸も一通りある。「ごちそうさま」と手を合わせスプーンとお皿と持って台所に行くと、廊下を嬉しそうに歩くミツバさんが廊下の端に見えた。

「今夜は出かけるそうでさァ」
「 …そっか」

ああ、だからか。ミツバさんには彼氏がいる。あたし達と同い年で幼馴染。最近はあんまり逢わないけど。そいつは土方十四郎と言って、総悟と十四郎は昔から犬猿の仲でミツバさんと十四郎が付き合い始めてからその状況は悪化した。総悟はきっと哀しいんだ。自分からミツバさんが離れていってしまうのが。別に嫉妬とかそういう感情ではないと思う。総悟はミツバさんの幸せのためならなんだってするだろうし、そのためならどんな辛い事もすると思う。
例えばの話、あたしを殺さないとミツバさんが死ぬ、なんてことになった時。総悟は躊躇わずにあたしを殺すだろう。それくらい総悟にとってミツバさんは大事な存在だ。もちろんあたしだってミツバさんのことが大好きだし、体が弱いミツバさんの役に立つ事ならなんでもしたいと思う。それでも総悟に殺されてしまうのは、どうにもかなしい。それならいっそ自分で死んでしまったほうが幾分もましだ。

服を選んでいるらしい、ミツバさんは部屋に居る。三人分の食器を洗い終えてもう帰る頃合になった。台所からソファに座る総悟の後頭部が見える。サラサラの髪はミツバさんとそっくり。何故だか性格は天と地ほどの差があるけど。・・言葉を間違えたかもしれない。別にどっちの性格が天でどっちの性格が地なのかとかを言いたいわけじゃない。ただ、その差を現したかっただけ。それだけ

「なあ」

総悟の言いたいことがなんとなく理解できたのでソファーの隣に座らせてもらう。今日は帰らなくてもいいや。もしもミツバさんが遠くに行ってしまうならふたりで一緒に涙を流そう。ミツバさんの幸せを純粋に二人で笑えるようになるまで、一緒に、汚い感情も全部。

「大丈夫」

のどがひりひりと痛かった。



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