放課後、ただ机に伏しているだけで一日が終わり、やっぱり部室に居る方がいいと改めて感じた頃、総悟が迎えに来た。とたんクラスの女子はきゃあきゃあと雄叫びをあげ、総悟があたしに歩み寄ってくるのを見つめていた。はじめは期待に胸を膨らませていた女子達も、総悟の用があたしだと解ると、打って変わってヒソヒソと陰口を始めた。総悟に促されるまま、机を元の空き教室に戻してあたしの鞄を持って先に歩き出している総悟を追おうとしたら、誰かに足を引っ掛けられて、元々脳内労働専門の森ガール(最近知った言葉だ)なあたしはまともに転んでしまった。鼻をぶつけて痛い。鼻に手を当ててみるとぬるりときもちわるい感触がして、更に特有の鉄臭さから、鼻血が出ていることに気付いた。総悟はそんなあたしを、呆気に取られながら見ている。周りでは男女構わず此方を数奇な目で見ていて、居心地が良いものではない。それにしてもだれなんだ。こんな悪戯高校生がするものではない。精々小学生程度だろう。

「大丈夫ですかィ」

やっと手を差し伸べてくれた総悟に遅い、と呟いて手を伸ばす。しかしサディストと呼ばれる性癖をもつ奴は一筋縄にはいかない。あたしが掴もうとした手をサッと退けてしまった。空振った手はそのまま立つための次の動作に流れた。この程度で更に羞恥を煽ってしまう様なヘマはしない。

「ばか」
「なんとでも」

そう言って歩き出す。今更かも知れないが、今あたしは幽霊生徒ではない。悪い意味だとしても、今あたしは周りからの視線をうけている。なんだか妙な気分だ。総悟にとっては普通のようで、意気揚々と廊下を歩いている。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -