書きかけB

ひとりぼっちで風邪って寂しい。悲しい。恐い。

この季節の変わり目に、風邪を引いた馬鹿がひとり居ました。熱は恐くて測ってないけど…立ち上がると頭がくらくらするし、鼻水が酷い。
昨日と一昨日はどうしても外せない用事があって外出せざるを得なかったけど、今日はなんとか休みをとった。だけどもひとり。朝から何も食べてない胃におかゆを作ってくれるひともいなければ、せめて一杯の水を持ってきてくれるひともいない。いつもは職場にいるはずの平日の昼間にひとり、ぽつんと布団のなかにうずくまっているだけ…。そうか、わたし…もうすぐ死ぬんだ。
自分でも頭が回っていないのを自覚しながら、それでも枕元にあったケータイを開く。目に悪い液晶の光に目を瞬かせながら、いつもの動作で電話をかける。できれば新八君が出てくれますように。

「もしもしィ?」
「ぎんとき…」
「あれ、#名前#?」
「銀時…はぁ、私…」
「どうしたよ」
「わた…し、もう死ぬかも…」
「えっちょ…」
「助けて」

銀時の声が大きくなって、頭に響いたから電話をきった。熱に浮かされて何も考えられない自分と、これでひとりぼっちじゃなくなる、とフワフワしながらも自分の欲求に妙に素直な自分が、複数の光源で重複して見える影のように自分の中に折り重なっているのを感じた。
家の鍵は銀時も持っているはずだから、このまま寝てしまっても大丈夫だろう。


「…い、おい、#名前#。起きれるか?」
「ん……、ぎんとき?」
「おう、飯食えるか?」
「ごはん?…うちにないよ」
「俺がつくったの。おかゆ、食う?」
「つくった、おかゆ…」
「そう。たまご粥」
「たまご…たべる」
「じゃあ今持ってくるから」

そう言うと銀時はすぐにグラタン皿に入ったほかほかのおかゆを持ってきた。だるい身体を起こして、ほどよい暖かさのおかゆを口に運んだ。

「…あまい」
「あれ?うまくない?」
「んー…んー、おかゆじゃないみたいだけど、おいしい」

普通おかゆというものは、程よい塩味がおいしい食べ物のはずだ。だけどこれは程よい甘さがあって、銀時っぽい謎のおいしさを醸し出していた。


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