書きかけ@

あなたは攘夷戦争の最中、「インブジブルフェニックス」の異名を持つ稀代の黒魔術師として、天人たちから戦場へ出るたびに失笑や嘲笑を受けていました。天人と戦う同志のうち最も仲が良かったのは高杉晋助。彼の二番目にお気に入りの草履を守る盟友として、彼からやや小バカにされていたようです。

朝が来た。来てしまった。朝になったということは、また戦場に行かなければならないということだ。ああ、憂鬱。
しかし、私に目覚めてから布団の中で悶々と考えあぐねる時間はない。すぐさま布団を飛び出しいつもの服に着替え、布団に入れておいた草履を懐にしまいこんで部屋を出た。
「#名前#」
「ははっ温まっております!」
私が、男たちが大量に寝ている大きい部屋に向かうと、高杉は既に起きていて、草履がないから土間へ出られないからメシが食えねえじゃねえか光線を私におみまいしてくれた。すぐさま土間に彼の二番目にお気に入りの草履を置き、サッと離れる。この時、一瞬でも隙を見せると高杉は私の帯をぐんと引っ張って私を土間に叩き落そうとする。ぴしゃりと冷たくて土と同じ味のする土間の床を味わうのはもうごめんだ。そんな私を見て、高杉はおもしろそうにフッと頬をゆるませ、私の方を指差す。
「踏んでる」
「へ?…ああっ」
私の裸足の足の下には、高杉の愛刀。その名も「漆黒雷羅」読みはブラックサンダー(命名はいわずもがな…)が。冷や汗が背中を伝う。
「俺のブ、ブラックサンダー…を踏むたァ、覚悟できてんだろうなァ?」
自分でも、ブラックサンダーという命名は恥ずかしいらしい。小声になっていた。そもそもブラックサンダーという名前は下僕同然の私にしか教えていないのだ。案外恥ずかしがり屋なのだ、彼は。
…などと無駄口を叩いていられる場合じゃない。ゆらゆらと心底おもしろそうな高杉の顔を尻目に、私は既に冷たい廊下を全力疾走していた。
まずい、まずいまずいまずい!
どうしよう、いざとなればこまま外に出てしまうことも可能だが、そうすると朝ごはんを食べのがすどころかお弁当を持ってゆくことすら叶わない。忌々しき事態だ。しかし足を止めれば、後ろには愛刀ブラックサンダー片手に恐るべき速さで私に近づく高杉が…。
後ろの様子を気にしつつ廊下の角を曲がろうとすると、視界が一瞬真っ黒になった。
「むぎゅ!」
なんと私は壁と接吻を交わしていた。ひりひりと痛む鼻頭とおでこ。そしてすぐ後ろには…。
「……ヒッ!」
「情けねぇなあオイ…クックック…」
振り向くと、笑いと怒りをまぜたようなとっても恐ろしい顔をした高杉がブラックサンダーを軽く振りながら立っている。
あまりの恐怖に膝が笑い、その場に崩れ落ちてしまう私。
私を見下す高杉は、それはそれはイイ表情をしていた…。

「アーッ」


とまあ、なんやかんやあり、なんとか無事朝餉を食べてお弁当を持って外に出ることができた。とは言いつつも時間に遅れてしまったので、今日共に戦う仲間は既に少し離れた場所にいる。ごつい男達を追いかけるのは中々容易ではない。そんな中で幸いだったのは、今日は高杉と同じ班ではなかったことだ。しかし、だからと言って安息が手に入るわけではない。
事情を理解していただくために、まずは私が「インビジブルフェニックス」なんていう不名誉な二つ名を持っている理由を説明しよう。
その前に、まずは今日共に戦う仲間のところに向かわなければ。
「遅れてすいませーん!」
既に戦い始めている仲間のもとへ駆け寄り声を掛けるも、返事はない。
「おーい!」
返事はない。
「ちょっと!聞いてくださいってば!」
この混戦状態の戦場でまったく無視されている。敵の刀すら飛んでこないのだから驚きだ。誰も私に気付いてない。
…そう、インビジブル。「透明」みたいな意味の言葉だ。存在感がないというより、多分みんな気付いてやってるんだと思う。軽くみなごろしにしたい。しかしいくら無視されているからと言え、ここは戦場。今度は私の「フェニックス」の部分をご覧にいれよう。
フェニックス、不死鳥。まあ不死身な訳ではない。もちろん。まあ、言うなれば身軽で敵の攻撃を避けやすいみたいな感じだ。攻撃が当たらないイコール死なないといった意味で受け取っていただければありがたい。全方向から飛んでくる私の顔より大きい握りこぶしやら古びた矢やらをかわしてちまちま攻撃を与えていく。刀で戦うのは私の本当の戦い方ではない。そろそろ、本領発揮といこうか。

「ウィン、ガーディアム、ハゲ、オッサン!」

刀を地面に突き刺す。すると地面にヒビがはいり、半径10メートル程度の距離にいる敵はみんな石になってしまったように動かなくなる。
そう、中二くさいといわれても仕方ないが、黒魔術だ。呪文はなんか変なのが多いが、まあ戦闘では役に立つ。敵が動いていない間に心臓や急所を狙って敵を倒していく。


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