ちびっこ三人、一緒に過ごす

 

『白い男』バスマ
『おおかみ先輩とこひつじちゃん』こひつじちゃん
『親愛的小星星』維星

三人を同じ部屋に入れてみた話。





 もじもじしているこひつじちゃん、ぼーっとしている維星、二人の間できょろきょろしているバスマ。広いカラフルな部屋の中には柔らかな絨毯が敷かれ、クッションがある。その上に座っている三人。こひつじちゃんはベージュのセーターに黒のデニム、維星は鮮やかな紫の民族風袍を身に着け、バスマは白いワンピース調の服に頭をふわりと覆うフードのような同じ色の布。三者三様の恰好をした、十代半ばほどの小柄な子たち。困ったような顔のこひつじちゃんは俯いたまま、維星はたまにきょろりと辺りを見回しながら服の裾をねじねじしていて、バスマは部屋の隅に置かれたテーブルに興味を示している。

 最初に動いたのはバスマだった。

 急に立ち上がったのを見て、びくっと震える両脇の二人。とことこ歩きだしたのを思わず目で追う。バスマはテーブルに近付き、その上の籠へのっている果物を見て目をきらきらさせている。バナナを手に取ると皮を剥いてもぐもぐ、おいしそうに食べ始めた。
 興味を引かれたのはこひつじちゃんで、じいっとその様子を見ていたのだけれど、やがて立ち上がって、隣へ行って果物を見つめる。色とりどりの果物、不思議な、見たことのないようなものもある。バスマがあまりにおいしそうに食べているので、こひつじちゃんもバナナを食べようと思った。匂いもいい。
 すると、バスマがバナナを取って渡した。
 ぺこりと頭を下げると、バスマがぱっと顔を輝かせてにこにこする。可愛らしい顔へ広がる華やかな笑みに、こひつじちゃんはバナナを握ったままで頬を赤くした。するとバスマは口元へと手を当て、目をぱちぱち、ぎゅっと抱きしめる。
 突然抱きしめられたことにこひつじちゃんは驚いた。バスマが身に着けている服からは、花のような良い匂いがする。


「かわいい」


 言葉がわからないけれど、バスマは何かを呟いた。そして、すりすり頬を擦り合わせてくる。もちもちした頬がふにふにしている様子を見ていた維星は、自分が仲間はずれであることが寂しくなったのかとっとこ近付き、こひつじちゃんの反対側にわしりと抱きついて同じようにすりすり。
 柔らかな頬がふにふに触れ合い緊張が解けたのか、しばらくして三人は仲良く果物を分け始めた。こひつじちゃんが剥いて切り分け、維星が青い棚からフォークとお皿を持ってきた。バスマは美味しそうな果物はどれかと品定めをしている。
 部屋いっぱいに、果物の匂い。
 横並びで椅子に座って、もぐもぐとおやつタイム。
 さてこれから何をしようかと考えるのは維星で、バスマはただひたすらに果物がおいしいと思っている。こひつじちゃんは、ここにおおかみ先輩がいたら分け合えるのになあ、と考えていた。

 お腹がいっぱいになると、洗い場で食器を洗った。そしてクッションのところへ戻り、バスマは赤い棚に収まっていた本を読み始め、維星はスケッチブックとカラーペンで絵を描き、真ん中のこひつじちゃんは鞄からノートを取り出して果物の形や味をメモ。

 静かに身を寄せ合う三人、思い思いのことをしていたけれど、やがて維星が目をごしごし、スケッチブックを閉じて、こひつじちゃんの膝を枕に横になる。くうくう寝始めたのを見て、バスマはきょろきょろ、机の下のバスケットの中に入っているタオルケットを見つけてバスケットごと持ってきた。黄色の柔らかなそれを維星にかけ、淡い青のタオルケットはこひつじちゃんへ、そしてバスマも横になる。じいっと大きな目に見上げられ、どうやら寝ようと言われているらしいと気付いた。
 ちょうど維星が一瞬目を覚ましたので、クッションを枕にするように誘導して、三人並んで横になる。バスマがくっついてきたけれど、眠くなっていたこひつじちゃんはあまり気にしなかった。



 さて、すやすや眠る三人が気付かない場所に光る小さなカメラ。
そのカメラで撮った鮮明な映像と音声は別室の画面に映し出されている。椅子に座って見ている三人の男。白いゆるっとしたパーカーにデニムシャツ、チェックのスラックスを穿いた若いひとりはにこにこ見守り、白い布を頭にかぶって同じ色のゆったりした衣装を身に着けたひとりはときどき無表情ながら何かをこらえるように膝を拳でがんがん殴る。黒い上等そうな民族服を着つけたひとりは前傾姿勢で膝へ肘をつき、組んだ両手で真剣に見ている。


「天国ですね」
「そうだな」
「何て言ったらいいかわからない」


 共通の言語を使い、ときおり会話を交わす。しかしほとんどが無言で、たまに寝がえりをうったり、体温を求めるように寄り添ったりするような様子を見てそれぞれの反応を示していた。

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