ナツ泊まり2

 とりあえず普段は全く使わない右京の部屋のベッドを使えるように準備しておいた。右京は俺とナツくんと三人で寝室のベッドに寝ればいいと言ったが、ナツくんが嫌だろうし、さすがにあのベッドに三人は少し狭いだろう。

 ナツくんと右京で洗い物をしてくれ、歯を磨いて二人は部屋へ。


「加賀さん、おやすみなさい」
「おやすみ、おじさん」
「うん、おやすみ」


 お風呂に入ってから、居間で少し調べものをし、良い時間になったから寝ようと寝室へ行くと。

 なぜか仔犬ちゃんと仔猫ちゃんが俺のベッドにもぐりこんですぅすぅ寝ていた。

 ナツくんが寝ていて、その背中から右京が抱きつくように寝ている。そして不自然に空いた右京の後ろのスペース。眠れないわけではないけれど、いや普通に眠れるけれど。寝方が可愛らしくて思わず笑う。オレンジ色の小さな灯りが点いているのは俺への親切だろうか。
 ……鬼島さんも見ていないし、許されるに違いない。
 出来心というやつでもある。
 ナツくんの方へ回り込み、身を屈めて口づける。もちろん口ではなく、頬に。右京にも。


「おやすみ。良い夢を」


 健やかに眠るふたりを起こさないようにそろそろベッドに入り、右京の背中を抱くようにして目を閉じた。仲良く眠る写真を撮っておけとの天啓が来たのは翌朝のことだった。
 朝早く目が覚めたので写真撮影。午後から仕事だけれど右京もナツくんも起こさないで良いだろうと昼辺りに身支度を整えていたら


「なつ、かわいいよ……」
「やぁ、ぁ、っ、うきょ、かがさぁ、っん」


 ちょっと色っぽいナツくんの声がしたので思わず寝室へ。するとそこには、ナツくんのTシャツの中に手を入れている右京の姿。涙目で助けを求めてくるナツくんが正直とても……なんていうか、素敵でした。


「かがさん」


 寄って来たナツくんの肩を抱き、頭を撫でる。ベッドに起き上がった右京は明らかに不満げだ。触り足りないのだろうか。


「だめでしょ、右京。ナツくんびっくりしてるよ」
「だって、魅惑のなつぱいが」
「……」


 思わず顔を素通りしてそちらを見てしまう。するとナツくんが「加賀さんまで、」と、とうとう本格的に泣きそうに。


「ごめんね」
「うう……」
「大丈夫だいじょうぶ。俺はナツくんの胸狙ったりしないよ」
「本音は?」
「ちょっと揉みたい触りたい。こら、右京」
「ブルータス……」


 後日、鬼島さんから「ナツくんのお胸は俺のもの、陵司くんのもいずれ」と送られてきた。
 後半は無視するとして、そんなに言われたら気になるところだ。


「加賀くん? なんか眉間に皺が寄ってるよ」
「十里木さん、胸ってそんなに個人差あるんでしょうか」
「胸? ああ、あるんじゃないかな。特に身体を動かしている子の胸はいいよ」


 一歩間違えなくても大変なセクハラ発言であるのに、周りから咎める空気が一切出ないのは恐らく十里木さんの人徳なのであろう。

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