深夜、帰宅した俺を待っていたのは俺のパジャマの上のみを着用した右京だった。すらりとした足が裾から覗く。


「お帰りなさい」


 もじもじと裾をいじりながら落ち着かなさげに言う。ただいま、と返して頭を撫でると驚いたように顔を上げた。


「おじさん」
「ん?」
「何かないの」
「なんでそんな格好してるのか、とか?」


 こっくり頷く。


「寒くない?」
「部屋の中は暖かい、から」
「そう……なんでかなあ」


 下も穿けばいいのに。そう言うとふるふる首を横に振り、それじゃ意味ない、と呟くように言う。意味がない、とはどういう意味なのか。
 首を傾げると右京も一緒に首を傾げた。可愛い。


「とりあえず下穿いて」
「意味ないんだってば」
「意味って」
「おじさんをゆうわくする」


 ゆうわく……誘惑、する?
 ふはっと吹き出すとむっとしたように頬を膨らませた。


「ごめんごめん。あまりに健康的な誘惑だったもんだから」
「勝負ぱんつも穿いたのに」
「勝負パンツ? 穿いてるの?」


 それは見たい。頷いた右京はすすすと裾を持ち上げてチラ見せ。全ては見せてくれず、一瞬見えたのはレースの生地で。


「ここから先はベッドで見せます」
「焦らすね」


 早くお風呂に入ってこなきゃね? と囁くとほわりと頬を染めて頷いた。誘惑は初めてらしく、とても初な反応が可愛らしい。
 お風呂に入って髪を乾かし、準備をしてベッドへ行くとちんまり座って待っていた。白い足が間接照明に艶かしく映っている。


「誘惑だったらもっと誘ってもらわないと」


 ベッドサイドに立って言う。すると困ったように見上げてきて、とりあえずといった様子でボタンをぷちぷちと外して肌を見せた。その見せ方が肩からするりと脱ぐもので、たしかに色っぽい。しかも全部を外すわけではなく、大切なところはまだ隠れている。


「ちょっとはゆうわくされた?」
「うん」


 ベッドに右京を押し倒す。白い肩にキスをして、胸の飾りを吸ったり舐めたり。ピンク色のそこは健気に固くなってぴんと尖った。片方は指で弄ってそのようにして、右京の口からは甘い声が漏れる。


「右京、勝負パンツ、見せてよ」
「やだ、恥ずかしい」
「誘惑、してくれるんじゃないの」


 身体を起こして上を脱ぐ。噛み痕だらけの身体に右京は一瞬見惚れたようだった。もじもじしながら、裾をめくって見せた。小さな面積しかない黒いレースの紐パンで、後ろはおそらくTバックになっているだろうそれ。恥ずかしそうな右京の様子との対比がたまらない。


「どこで買ったの」
「佐々木さんのクリスマスプレゼント……」
「佐々木さんらしい」


 他の男から貰ったものを身に着けるとは、という思いもないではないが、相手は佐々木さんだ。下心は一切ないんだろう。恐らく、きっと。


「いやらしいね」


 隠そうとする手をやんわり掴んで止め、じっくり堪能する。乱れたパジャマにいやらしい下着姿の右京など滅多に拝めない。この機会に見ておかなければ。


「右京、恥ずかしい?」
「恥ずかしいよ……」
「じゃあどうしてこんな格好したの」
「……おじさんに、」
「うん」
「構ってほしかったから……」


 たまらない気持ちになる。構ってほしかった、と思うほど俺は右京を放置してしまったのか。と、同時にきゅんとしてしまった。構ってほしかったから、だなんて可愛すぎる。


「もっとよく見せてよ」


 足開いて、裾捲って……? そう囁いたらおずおずとその通りにした。裾を捲り大胆に足を開き、やはり後ろはTバックだった。


「恥ずかしい」
「誘ったのは右京でしょう?」


 レースのフロント部分に顔を寄せる。そこはもう窮屈そうにしていて、顔を押し付けて嗅ぐと雄の匂いがした。


「もう興奮してるんだ」
「してる……おじさん、嗅がないで」
「どうして? いい匂いだよ」


 洗濯用の洗剤に混じる雄の匂い。健康と不健全の間。べろりと舐めるとざらついた生地が舌を刺激した。紐を解けば簡単に中身が露出してしまう。それではつまらない。だから、後ろの紐を少しずらした。そこから指を入れていく。


「おじさん、脱がさないの」
「せっかく可愛い下着穿いてくれてるからね。勿体無いからこのまましよう」


 誘惑の名にふさわしく柔らかく解されたそこは簡単に俺の指を飲み込む。むにゅむにゅと蠢いてまるでもっと奥に欲しがっているみたいだった。指を何本か入れて感触を確かめたあと、右京の顔を覗き込む。すっかり溶けてやらしい顔になった右京は俺の腕にしがみついて「もう、挿れて」と小さな声で言った。


「仰せのままに」
「意地悪」
「どこが? 右京には従順でしょう、俺」


 下を脱ぎ、全裸になった加賀が再び右京に伸し掛かる。ジェルを塗ったそれを紐をずらしてゆっくりゆっくり差し込んで、すべて収める。


「あー……」
「気持ちいい……?」
「気持ちいい」


 右京の中はぬるぬるして温かくて柔らかい。奥の方に差し込むとぎゅうっと抱きしめるように締め付けてくる。
 右京と手を繋ぎながらキスをする。ちゅっちゅ、と触れるだけのキス。


「おじさん」
「何?」
「脱がせ、て……窮屈」
「ダーメ。可愛いから」


 ちゅっと額にキスをして、ゆっくり抜き挿しをする。そのたびに右京は甘い声を漏らしてん、ん、と反応した。それが愛おしくてゆっくり、ゆっくり行為を進める。奥の奥に嵌めるとびくんと背を反らしてしがみつく。


「や。奥」
「気持ちよくない?」
「気持ち良すぎて、いや……」
「じゃあいいよね」


 ぐり、と押し付けるとはぅん、と声を漏らす。
 ごりごりと挿れる。いやだ、と言う右京の言葉は無視をして奥を押した。その度に身体が跳ねる。


「痛くない?」
「気持ち良すぎていや、なんだってば」
「そう」


 ぐっと腰を進めたり引いたり。その合間にキスをして、片手は生地の上から右京のそれを撫でる。かちかちになって狭い生地の中で苦しそうだ。しかし出してはやらない。意地が悪いだろうか。でもこの下着姿の右京は可愛いからもう少し見ていたい。



「右京」
「ん……?」
「今日はいっぱいしようね」
「ん」


 くちゅ、と音がする。
 ベッドでふたりは、しばらく睦み合いに夢中になっていた。


「可愛かったな、あの下着姿の右京」
「もう穿かないからね」
「どうして?」
「おじさんがケダモノになるから」
「ケダモノ」
「ケダモノ」


 その下着は右京のクロゼットの奥深くに仕舞われたとかそうじゃないとか。


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