「先生が、高校生にも興奮する変態なだけだと思います。ぼくは、普通に」
「ただの高校生がそんなメスみてーな目ぇして男欲しがるわけねぇだろ。黙ってしゃぶれ」
髪を掴まれ、押し付けられる。スーツの生地の上からでも充分にわかる熱に頬がぎゅっと当たって、乱暴にされているのにどきどきが止まらない。
興奮で震える手でおじさんの前を寛げ、中から取り出す。ぶるんと出てきたそれはかちかちで、太くて、大きい。全然おじさんとこういうことはしていなかったので、溜まっているのかもしれない。下着の上から揉んでみた嚢も、とっても重い。鼻先で存在感を放つそれを見ていたら、おじさんが笑った。
「うっとりしやがって。クソ淫乱が」
その辺の人に言われたら今すぐこの目の前のものを折ってやりたくなる。けれど、おじさんが、普段は優しい柔らかな声を固く、蔑んだ低い声にして言うだけでびっくりするくらい感じてしまう。こんな風になるなんて知らなかった。
舌を伸ばして、下からそっと舐める。手で上から支えて先まで舐め上げ、先を口に入れる。音をたてながらのどのほうまで飲み込んで、舌を動かして、みっともない水音を、普段よりずっと派手に鳴らして熱心に奉仕する。
「あー、やべぇ」
息混じりに言うその言葉に嘘はなさそうで、片手で嚢を揉みながらじゅるじゅると口淫に耽る。
「やっぱりお前、男大好きなんだな……」
「ふ……好き……おいしいです……」
口から抜いてぬるぬるになったそれを手で扱きながら、無意識に言葉が漏れる。大きく舐めたり、舌を細かく動かしたり、先だけ責めたり根元を舐めたり、また含んだり。
「せんせぇ……いく?」
手を動かしながら尋ねると、首を横に振った。
「お前のケツ貸せ」
これは嫌がるべきか、一瞬悩んだけれど立ち上がって、ズボンを落とす。下着は穿いていない。ふん、と笑ったおじさんは手を伸ばし、乱暴にぼくのお尻を掴んで揉みしだいた。おじさんの肩にしがみつき、思わず声を漏らしてしまう。
「なんだよ、ケツ揉みだけで感じるのか、ド淫乱」
「ちがいますっ……」
「違わねぇだろ。男のしゃぶって、ケツ揉まれて、がっちがちに腫らして」
ワイシャツをわずかに持ち上げているそれに、荒く指がからむ。腰をがっちり抱かれたまま、大きな手でごしごしされると我慢できないくらい気持ちがいい。
「エロい声出しやがって……」
ぐいっと腕を引かれてベッドに倒され、すぐにおじさんが上に圧し掛かってくる。ぼくの身体に跨ったままで、スーツの上着を脱いで片手でネクタイを引き抜いた。その姿がとてもかっこよくて、きゅんっとする。顔の横に腕をついていつもと違う噛み付くみたいな荒いキス。その目は余裕がない。
ぼくも多分、同じ目をしている。
久しぶりにおじさんに触れて、しかも普段と違う感じのおじさんが相手で、興奮しないわけがない。
シャツの上から胸をまさぐられて両方の乳首を同時につねり上げられ、胸を突き出して悶える。その感覚だけで下半身がびりびりして達してしまいそうになったけれど、もう少しというところで刺激が止められてしまった。
「あっ……ん……」
「残念そうな声出してんじゃねぇよ」
おら、尻出せ。
身体をひっくり返されて腰を高く上げさせられる。ぐいと左右に開かれ、ぺたりと舌が触れた。器用な厚い舌が固くなって、ぐりぐり表面を舐めた。まるでそれだけで押し開こうとしているかのように。
ずっと触られていなかった場所に、大好きなおじさんが、と思うだけで頭がおかしくなりそうなくらい感じた。ぎゅうっと閉じたり緩んだりしてしまっていることがわかる。手はいつの間にかシーツを固く握り、足がびくんびくん跳ねる。
ごりっと入ってきたのは、指ではなかった。
ぬるぬるのローションを纏った、おもちゃ。それは動き出してぐりぐり中を押し広げる。きゅうっと締まると一番動く先が気持ちいい場所に触れてびりびり快感が駆け抜ける。緩めたいのに、感じてしまうから緩めることができない。息とも声ともつかない音を漏らしながらシーツに顔をこすりつけていたら、おじさんの手がお尻の表面をなでた。
「気に入ったか」
首を横に振る。こんなの、おかしくなってしまう。強烈な感覚は暴力的なまでの刺激をよこす。ぐっと、更に奥へ押しこまれて多分悲鳴が漏れた。
爆ぜるような感覚に、下半身が濡れる。
中への刺激だけで達してしまったのだ。過ぎた快感にうつぶせになったままぐったり、涙を零す。
抜き去られたそれの無機質な振動音が切れ、静かになる。
「……ごめんね、大丈夫?」
頭を撫でて隣に寝転び、顔を心配そうに見てきたのは眼鏡もオフされた、いつものおじさんだった。すり寄ると、優しく口付けて汗ばんだシャツごとぼくを抱きしめてくれる。涙が止まるまで、おじさんはぼくの身体を撫でたりキスをしたりしていてくれた。
もう大丈夫、と、息を吐いて、吸って、びくびく震える胸を押さえる。
「……おじさん、続き、しよ?」
「いいの?」
「うん」
でも、前から、おじさんが、して。
そう言うとおじさんは笑った。
「抱っこしてあげるね、可愛い高校生くん」
ベッドヘッドに枕を幾つか重ねて寄りかかったおじさんの上に跨り、腰を支えられながら硬いままのそれを飲み込む。隔てる物が何もない肉の感触に背筋が戦慄く。
顔を埋めていた肩を、シャツの上から噛んだ。布の感触の下にあるおじさんの肌や筋肉が愛しい。
「高校生が、いいの? こんなおじさんといけないことして」
髪に擦り付けられた顎に短い髭の感触。囁きはさきほどよりずっと甘ったるく、優しい。軽く身体を揺すり上げられ、おじさんが、中のいい場所を擦る。おもちゃに擦られるのと全然違って快感がじわじわと広がるのはなぜなのだろう。おじさんに抱きついて、緩やかな気持ちよさに揺蕩う。
「いい、の」
「どうして?」
「……おじさんが、好き、だから……」
きつく抱かれて満たされる。
中も外も、おじさんでいっぱいだ。なんて幸せなんだろう。
「……さっきのおじさん、演技じゃないよね……」
「どうして?」
「ん……言い慣れ、てた」
「……気にしないで。それより、こっちに、集中」
両手でぐっと腰を押さえられ、下から突き上げられる。ふわりふわり、内側から身体を揺らした。
「……っ」
「右京の中はいつもきついね」
「ん、おじさんが好きすぎるのかも……」
「好きに過ぎることなんかないよ」
だから、もっと愛して、もっと好きになって。
おじさんは笑って、ぼくにキスをした。
*
「おじさん、この頃ずっと昨日みたいな口調だったの?」
「おっと右京、そのアルバムをこちらによこしなさい。どこから手に入れたの」
「嫌です。鬼島のおっさんからのお中元に入ってた」
「鬼島さんか……右京」
「これはぼくのだもん。名前書いてあったもん」
ほら、と右京が見せてきた紙。出元右京様宛と確かに書いてある。近づくと警戒してアルバムを抱きしめる右京に、取らないから、と言って一緒に見た。
目眩がするほど昔の写真がたくさんある。あの頃は若かった。
「あ、おじさん、スーツもシャツも、大丈夫?」
「あれ、家で丸洗いできるしアイロンもかけられるから大丈夫」
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