おじさん
右京(うきょう)
先生生徒のイメージプレイがあります。
途中、おじさんの口が悪いです。
いつもの加賀右京だけがお好きな方はお戻りください。
*
朝、帰ってきて、右京と朝ごはんを一緒に食べて夏期講習に行くのを見送った。食器の片づけをして掃除をして洗濯をして風呂に入り、そこで訪れた眠気のピーク。もう少し浸かっていたかったけれどこれ以上いたら眠ってしまう、と、仕方なく身体を引き上げて着替え、髪を乾かして寝室へ。
右京は俺がいないときには寝室を使わない。だから整ったまま。ネイビーの布団に横向きで包まって、肩まで引き上げる。目を閉じるとすぐに意識が途切れてしまった。
昼で講習が終って帰ってきたら、寝室のドアがぴったり閉められていた。
きっとおじさんが寝ているのだろう。朝見た顔はとても疲れていたから、起こさないように慎重に。でも下手に音を殺すとそちらのほうが気になるらしいので、普通程度にしつつ洗面台へ。
手を洗いにいったところで、洗濯機の上に置いておいた洗濯物の籠が空になっていることに気付いた。おじさんが洗濯をしてくれたらしく、隣のドアを開けて干し場を見るとシャツなどが綺麗に並んではためいている。
疲れているんだから、そんなことしなくてもいいのに。
食器もきちんと片付けてあり、掃除まで。ぼくがすることは何もなくなってしまった。とりあえず昼ご飯を作ろう。今日は野菜たっぷり冷やし中華ごまだれ味と、十里木さんから貰ったハムを厚切りにして焼くつもりだ。おじさんは、起きてくるだろうか。手間がかかるものではないから、起きてから作ってあげよう。
生の中華麺を茹でてブロッコリーを茹で、レタスやきゅうり、トマト、ねぎを小さく切る。麺を良いところで引きあげ水で洗って器に盛って、野菜をどんどん乗っける。それからおじさん作でいつも冷蔵庫に保存されているごまだれをかけて出来上がり。塩こしょうしてオーブンで焼いていたハムもちょうどいい。
夏の昼は簡単な料理が一番。それからあまり火を使わないやつ。
リビングの窓やドアをおじさんが開けておいてくれたおかげで、風が吹いてきてとても涼しい。
もくもくと麺をすすり、ハムを切って食べる。ごまだれはやっぱりおいしい。
おじさん、大丈夫かな。結構疲れていたようだったけど。
今日の夜ご飯は豚肉がいいかな。疲労回復。それから焼きなすとしょうが。あ、でもおじさんが好きなお粥を作るのもいいかもしれない。どっちにしよう。
よし、どっちもにしよう。
課題をやって洗濯物を取り込んで、一階に郵便物と荷物が届いたらしいので取りに行って(鬼島のおっさんからのお中元だった)箱を抱えて戻ってきたらおじさんがソファに座っていた。
手には水の入ったコップ、髪もわずかに乱れたままでぼーっとしている。
「おはよう、おじさん」
「あー、おはよう……」
くぁぁ、とあくびをするおじさん。わずかに生えた髭とか、いかにも寝起きの感じがたまらなくときめく。普段きちんとしているので、ときどきこうして油断している部分を見せてくれるとどきどきする。
「おいで」
と言われて、荷物を放り出して普段より温かいおじさんに立ったままぎゅっと抱きついた。頭を抱きしめるような感じ。
「帰って来たばっかり?」
「ううん。どうして」
「制服姿だから」
「あ、まだ着替えてないだけ。ちょっと前に帰って来た」
そうなんだ、と頷いたおじさんの声が胸の辺りに響く。腰を抱いていてくれた腕がするりと解けて、手のひらがお尻の辺りをするする撫でる。
「右京、明日も講習?」
「ううん。今日でおしまい」
「そっか……学校が始まるまでまだ時間あるよね」
「……? うん」
おじさんの顔を見ると、にっこり。でもその目は、妖しく光っていた。
「おじさんの夢、っていうか、野望? 叶えてくれる?」
首を傾げてから頷く。おじさんの野望ってなんだろうか。
するとおじさんはありがとう、とぼくの腰をなでて立ち上がった。
夜、ご飯を食べてお風呂に入って、でもぼくが着たのは、いつもの寝間着ではない。
制服。
昼間着ていたのとシャツは違うが、ズボンは同じ。新しいのを出していたら、どっちも洗ったやつに替えちゃうの? と残念そうに言われたので、考えて下だけ同じのにした。
お風呂上りにまた制服を着るなんて、変な感じだ。
髪を乾かしてから寝室へ向かう。
ベッドに座ったおじさんはなぜか地味なスーツ姿だった。それに初めて見る黒い縁の眼鏡。剃っていないひげがわずかに生えている。前に立つと、両手を握り締めてお腹に頬を摺り寄せてきた。
「おじさん、なんでスーツなの」
「なんかいけないことしてるみたいじゃない?」
「……先生、って呼んであげよっか。加賀せんせ」
「それもいいね」
顔をあげたおじさんにちゅっとキスをして、足の間にひざまずく。
「先生、ぼくのこと見てるだけでこんな風になっちゃったんですか……?」
そっと、手のひらを這わせるとすっかり硬くなっていた。疲れもあるのだろうか、いつもより更に硬いように思う。すりすりしながら上目遣いで見上げると、おじさんはふっと目を細め、いつもと異なった笑みを浮かべてぼくの頭を撫でる。
「お前がそんな目で見るからだ。真面目な生徒だと思ってたのに、がっかりだよ」
お前、と言われて冷たい視線を向けられて、背中がぞくぞく熱くなった。
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