佐々木 一々(ささき かずいち)
右京(うきょう)


佐々木が右京と出会った時のお話。
佐々木と右京が絡み合ってます注意。
シノ以外なんて!加賀以外なんて!と思われる方は見ないほうがいいです。
見なくても問題ありません。





 佐々木一々は、その当時、今よりはっきりと少年が好きだった。とはいえ、子ども子どもしている元気な子はあまり好きではなく、多少大人びて色気が出てきた辺りの頃が好きだった。一番好きだった、というだけで、他にも様々な年齢の人間を食い散らかしていたのだが。

 そんな佐々木が、車でたまたま通りがかった深夜の駅前で、ふと視界に入った。
 気のせいかとも思ったが、自分の目を信じるほうなので車を停めて降り、道を少々戻る。駅の本当に目の前、植え込み。背が高い木が生えているだけで何の変哲も無い。その枝を掻き分けると、そこに。


「やっぱりいた」


 膝を抱えた、制服姿の少年を見つけた。
 しかも稀に見るような、美少年。可愛らしさに混ざり始めた、成長という名の美しさ。同じ年頃の子よりは落ち着いた雰囲気と眼差し、でもその身体はまだ子どもっぽく丸い輪郭をしている。あと二年ほど経ったらさぞきれいな高校生になることだろう。
 猫のような目が、きょろりと佐々木を見上げる。


「……お金? それとも、寝る場所? 食べるもの?」


 佐々木の問いかけに、少し迷ってから「今は、後ろふたつ」と答えた。


「ついてくる? 身の保証はしないけど」
「……痛いこと、好き?」
「好きだけど、君が嫌いならしないよ。かわいい顔が見たいだけ」
「だったら、いい」


 佐々木も表情に乏しいほうであるが、その少年もなかなかであった。全く表情を変えないまま、佐々木のあとをとことこと着いてくる。
 あんな場所にいた理由は補導を警戒してのことだろう。自分のように見つけてくれる人もしくは、お眼鏡に適った人を見つけたらついていくつもりだったに違いない。と佐々木は考えつつ助手席のドアを開ける。


「いらない」


 猫じみた少年はぽつりと答え、自分でドアを開けて後ろに乗った。肩を竦め、運転席へ。


「猫ちゃん、お名前は?」
「……あとで言う」
「食べたいものはある?」
「おいしいもの」
「好きなものは?」
「嫌いなものはない。でもおいしくなきゃ嫌だ」


 佐々木はシートベルトを締めてから、携帯電話を取り出してなじみの店にメールをした。二十分ほどで取りに行くので、料理をいくつかテイクアウト用に詰めておいてほしいこと、味付けはいつもよりマイルドに、子ども向けに。すぐに了承の返事が返ってきて、エンジンをかける。


「……お兄さんのお名前は?」
「俺は、佐々木だよ。一々」
「かずいち」
「うん」
「かずいち。呼びやすい」
「そうかな」


 好きに呼んでいいよ。と佐々木は言った。かわいい子に呼ばれるのなら、なんて呼ばれようが大歓迎だ。
 遠ざかっていく明るい駅前。猫少年はしばらく後ろを見ていたが、やがて飽きたように前を向いた。それを佐々木は、ルームミラー越しに見て笑った。


 途中で深夜まで営業している創作和食レストランに寄り、料理を受け取って代金を払った。その間、猫少年は車の後部座席からじっと店内を伺っていた。佐々木を見ていたわけではなく。
 人にあまり興味を示さないタイプなのだろうか。それとも興味を示さなくなるような何かがあったか。あのようにきれいな顔ならばいろいろな意味で生きにくいだろう。
 そんなことを思いながら、車に戻って再びハンドルを握った。


 佐々木の部屋を、興味深げにぐるりと見渡す。引っ越してきたばかりでまだすかすかの本棚、荷ほどきしていない段ボール箱がいくつか、けれど寝室は綺麗に片付けられている。猫少年の目はドアが開いたままのそこに一瞬留まり、けれどすぐに、佐々木が広げた料理の前にいそいそと座った。キッチンと対面するように作り付けられたカウンターの背の高い椅子は少年には不釣合いで、でもその感じがいい。
 後ろに立ってジャケットに手を掛けると、なんら抵抗無く脱がされた。ネクタイも外してやり、ソファに放る。少し気にしたようだったが、食のほうにすぐ気を取られた。
 いただきますと手を合わせ、箸を持って最初に手をつけたのは茸が散らされた出汁巻き卵。それからもくもくと箸を休めなかったところを見ると、どうやら口に合ったようだ。
 佐々木は隣に座って日本酒を飲みつつ、その姿を見ていた。意外とよく食べる。この深夜に。


「……これ、なに?」
「地鶏の蒸し焼き」
「おいしい。鶏肉?」
「そうだよ」


 さっぱり系の味付けが好みなようだ。狙いは当たり。
 グラスの縁を指先で撫で、じっくりと上から下まで観察する。家の無い子、ではなさそうだ。なんとなく、きちんとした家に生まれ育ったような雰囲気がある。食べている姿というのは便利だ。知らない相手でも、なんとなくどのような性格か察することが出来る。
 佐々木の分析が終わるころ、少年もちょうど最後の料理を食べ終えた。


「ごちそうさまでした。おいしかった」
「どういたしましてー」


 すべて使い捨てだったのでゴミ袋にまとめて捨てて、さて、と椅子に座ると、少年が見上げてきた。お茶を淹れてあげたカップを両手で持ちながら、桜色の唇が、ゆっくり開く。


「かずいちは、いやらしいこと、好き?」
「好きだよ。気持ちいいじゃない」
「……気持ちいい?」
「そうだよ。知らない?」


 少年は、こっくりと頷いた。
 佐々木が笑う。それはもう楽しそうに。


「教えてあげようか」


 囁いて、少年の椅子の肘掛へ手をかけ、そっと唇を重ねる。多少は嫌がるだろうかと思ったけれど、抵抗らしい抵抗はなかった。目を開けたままだったので、一度少し離れてから目を手のひらで覆い、再び触れて柔らかな感触を堪能する。口の中はお茶で洗い流されていた。


「……お風呂入りたい?」


 さきほどより、少々ぼんやりした目で頷く少年。そう、と佐々木は答え、手を引いて浴室へ連れて行く。食事の前にボタンを押しておいたので、浴槽はすでに湯で満たされていた。
 手際よくシャツを脱がし、ズボンを脱がせる。
 やはり抵抗はしなくて、けれどその肌を見て、手を止めた。


「……これはこれは」


 みずみずしいはずの白い肌。しかし手首、二の腕、上半身、太もも、ふくらはぎ、足。縦横無尽についた真っ赤なみみず腫れ。何か細いもので強かに打たれたようなその痕跡。痛いこと、とはこれを指すに違いない。見ていないけれどきっと身体の後ろ側にも多数あるはずだ。


「……嫌だったんだ? こういうことされたの」


 肩についたあとを指で撫でると、痛みが走るのか微かに身体が揺れた。微かにゆがんだ顔で頷く。


「痛いの、きらい」
「そっか。でも、こういうことに多少は慣れないと、これからは厳しいかもしれないね」


 誰かに拠って生きていくなら。様々な好みの人がいる。
 呟きに首を傾げた少年の目の前で、佐々木も服を脱いだ。ためらいのないその様子をまじまじ見ていた少年だったが、先にすたすた洗い場へ行ってシャワーを出す。背中にもやはり多数の痕がついている。


「洗ってあげる」


 真っ黒な髪を濡らし、小さな頭を大きな手にあわ立てたシャンプーで洗う。簡単に折ってしまえそうな細いあちこち、未成熟な身体つきはとても美味しそうに見える。さきほどの料理よりも。
 身体のほうは、手のひらに石鹸をあわ立ててそっと撫でた。タオルを手に取ろうとしたのを見ていやいやと首を振ったからだ。柔らかな肌の上を滑る白い手。片手で腕を持って洗う。
 向かいの鏡の中で、少年の目が微かに細くなった。しみるのか、それとも肌をなでられて気持ちがいいのか。見つめていると徐々に頬が赤らんできたので、どうやら後者だったらしい。両腕を洗って首周りを洗って背中を洗って。前に手を回して、淡い色合いの柔らかな尖りを指でつまんだ。急な先端への刺激に、目をぱちくりさせる少年。
 くるくる、手のひらや指などで刺激されているうちに感覚があったのか、柔らかそうな白い太ももをすり合わせて、鏡の中で困ったように後ろの佐々木を見る。


「好き?」
「わ、かんな」
「そっか。じゃあわかるまでやろうね」


 強めに、弱めに、掠めるように、押しつぶすように。
 さまざまな刺激を与えていたら、可愛らしい声を漏らしたり、佐々木の肩に頭を預けて擦り寄ってきたりするようになった。


「好き?」


 再び尋ねると、真っ赤な目じり、潤んだ目でこっくりと頷く。


「ん、すき……になった」
「よかった。気持ちいいところが増えると楽だからね」


 佐々木の頭の中には、すでに見えているものがあった。
 この少年はきっと、いい商品になる。
 そのためにはまず、価値を出さなければならない。過剰に感じる身体になるまではいかずとも、快感を自分で拾える程度にはしておきたい。何も感じない状態よりも、その程度からが好まれる。

 家の無い少年を何人かこうして拾ってきたが、今、自分の身体で稼いで暮らしている子たちがほとんど。客を紹介するのは佐々木で、その仲介料は少ない金額ではない。彼らも儲かるので、需要と供給の論理から言えば成り立っている。悪いことだとは少しも思わない。

 くす、と笑った佐々木は、手を薄い腹に滑らせ、さらにその下へ。
 まだ些か小さな、けれどきちんと硬くなったそれを手のひらに収める。明らかに、身体が大きく揺れた。


「かわいいね」


 耳の辺りに口付け、囁きながら手を動かす。皮に包まれたままだが、刺激してやると上下に動くので剥けているのだろう。親指で、くり、と上の部分を刺激すると、首を反らして甘い声を出し、足までも震わせた。
 白い身体が、悩ましく色を含む。
 タイルの上に座った佐々木の膝に抱えられるように座らされた少年は、前と一緒に後ろの、普段触れないような場所に指を入れられてにゃんにゃんと仔猫の声を上げている。震える身体を抱きつつ、佐々木の指は冷静にそこを調べていた。
 他の部分は未開発だったのに、ここはずいぶん柔らかい。
 どうやら、こちらだけは使われていたようだ、と、引き出した指でくるりと入り口周りをなでる。ぷくりと膨らんだそこは、どう考えても何も知らない様子ではない。指の食み方も。

 胸や肌でもう少し気持ちよくなれたら、すぐに商品になる。

 感じすぎて辛いのか、目を細めたりぎゅっと閉じたりしている少年の額へ口付け、ゆるゆると扱いていた幼い性器を強めに擦ってあげた。高い声、途切れ途切れだったり、続いたりするような甘いそれを零して、足の間に差し入れられた佐々木の腕を腿で挟んでもだえる。柔らかな尻が押し付けられて正直たまらないが、射精をしたら子どもの体力は残らないだろう。
 明日も、きっとこの子はいる。
 そう思ったので、とりあえず快感だけを与えてあげることにした。


「……出会えて嬉しいよ」


 ひく、ひく、と身体を震わせる少年に嬉しそうに囁いて、佐々木はきゅっと小さな身体を抱きしめた。

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