部屋を掃除していたら、クローゼットの奥にあった高校のアルバムを見つけた。
 開いてみる。
 と、一番最初に学年の集合写真。そこにはすごくアレな生徒たちが並んでいた。
 金、銀、白、赤、黄色緑青オレンジ……思いつく限りの色に染まった髪、原色のTシャツに太いズボン、学ラン、私服、マスク。
 ものすごい、学校だ。うちの学校にはひとりもいない。中学校のときも、多分見たことがない。街中でも。そもそも現存するのだろうか。

 そんな、ぼくからしたら天然記念物のような生徒たちの真ん中で一番楽しそうにしている、満面の笑顔の生徒。
 一番イケメンで目を引く。一重の優しい目元がとても魅力的に見える。
 二番目はその隣の、彫りの深い人。ふたりともすごく背が高い。

 そのイケメンが気になってぱらぱら、クラス写真を探した。最後のクラスに顔写真と名前。
 真面目な顔をしていてもかっこいい。緑の髪に少し黒い肌、一重の目尻は少し下がり気味。

 かっこいい顔の下の名前は加賀 陵司だった。加賀さんか。

 加賀さん……加賀 陵司……かがりょうじ……あれ?





 仕事を終えたおじさんが帰ってきた。ひときわ疲れた様子でため息をつきながらドアを閉め、出迎えたぼくを抱きしめてくれた。


「やっとお仕事終わったよー明日から三日のオフ。疲れたー」
「お疲れさま」


 ぎゅ、と抱きしめ返し、シャツへ鼻先を埋める。いつもよりもう少し濃いおじさんの匂い。
 張り切ってふんふんしていたら優しく引き剥がされた。おじさんは困ったように笑っている。

 あの写真とだいたい同じ顔だけれど、今のほうがずっと優しくて少しかわいい。写真は、そう、少し怖い。楽しそうなのに。
 多分、印象の違いに覆われている。

 じっ、と顔を見つめていたら首を傾げ、


「どうかしたの」


 リビングまで手を引いていってアルバムを見せる。と、明らかに顔色を変える。
 おそるおそるといったふうにぼくを見た。


「……見ちゃった?」
「うん。おじさん、これ?」


 指差すと、両手で顔を覆ってさっきより深いため息。


「おじさん、若い頃からかっこよかったんだね」
「いやぁ……今も昔も、冴えないよ」
「んーん。普通にかっこいい」
「そうかな。ありがと」


 ふにゃりと、眉を下げて笑う。
 ああ、ぼくはやっぱりこの人の今の笑い方が好き。

 この学校はどうだったのか、とか、高校の時の話とか、いろいろ聞きたいことはたくさんあった。

 でもそれよりキスしたくなって、おじさんの目を見つめる。黙って。


「……その目は、なに狙い?」
「おじさん」
「なるほど。とりあえず先にお風呂入っていいかな」
「ぼくも、いい?」
「もちろんいいよ。でもお風呂でやらしいことはなしね」


 額へキスをされ、頬を撫でてもらって嬉しい。おじさんの優しい眼差しはぼくだけを見つめてくれて幸せ。


「おじさん、すき」
「うん。わかってるよ」

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