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出所した佐々木と


 
鬼島と佐々木が少々いかがわしいです注意。
攻同士のいちゃいちゃです注意。





 二回目の、今回は少々長めの別荘暮らしを終えて出てきたとき、優志朗先輩がそこにいた。刑務官がきつい目で睨んでいるというのに、アスファルトの上に座って煙草をふかしている。その匂いは塀の向こうから出てきた直後から香っていた。相変わらずの甘い香り。
 隣に立つと、ゆっくり立ち上がった。
 蝉の鳴き声がやかましく、地面だって陽炎ができているくらいだから熱いはずなのに、平然とした顔。白いタンクトップに、色の薄い秋の空のようなサイズの大きいデニム、白いサンダル。しなやかな腕には縁取りだけでも躍動感が伝わるような神獣が豊かに描かれている。これから色を入れるのだろう。
 緩くウェーブのかかった長めの前髪の隙間からこちらを見上げた。


「……相変わらず、その煙草なんですね」
「匂いが変わったら、お前が俺を見つけられないだろ」


 そんな風に言って、目を細める。滑らかな指で煙草を挟んで、俺の唇へ銜えさせた。久しぶりの匂いが口に満ち、一瞬むせてしまいそうになったけれど、なんとか耐える。がつんとくるような強さ。
 優志朗先輩はくるりと向きを変え、歩き始めた。両肩に黒竜のうろこが見える。
 煙草を銜えたまま、そのあとについていった。


「家、借りといた。お前が住めよ。俺もたまに泊まるけど」
「ありがとうございます」


 何もないリビング、奥の部屋にはベッドだけがあった。きちんと寝具も整えられていて、優志朗先輩を見ると「寝る場所は大事だからな」と言ってそこに座った。俺の身長にあわせてくれたのだろう、そこそこ大き目のベッド。
 隣に座る。
 最初は少し間を空けて、でも優志朗先輩がまた煙草を取り出したので、それをやんわりと奪ってすぐ隣に。肩が触れて、顔を寄せて、鼻先を摺り寄せるようにキスをする。柔らかくて、温かくて、気持ちが高揚する。


「……なんか別人とキスしてるみたいだ」
「そうですか」
「お前に黒髪は、やっぱり似合わないな」


 よいしょ、と、俺の背中を押して横にさせ、馬乗りになる。無頓着な様子でタンクトップを脱ぎ捨てると、綺麗に浮きあがった腹筋の少し外側に縦に四センチほどの盛り上がりが見えた。それを目にしてすぐ険しくなる俺の顔。笑って、頬に手を添えてそっと撫でてくれた。宥めるように、優しい目で。


「別にもう痛くない。見ての通りきれいに治った」
「……それでも、許せないです」
「うん、でも、もうお前がこの手でやったろ?」


 片手がするりと俺の手に絡む。男っぽい手なのに妙にきれいな、長い指。それを引き寄せて、先輩の目を見ながら指の一本一本にキスをした。


「まだ足りません」
「足りないっつってもなぁ……」


 表情を苦笑いに変えた先輩。

 あの日、両手を真っ赤にして、身体のところどころも染めた俺を見て先輩は少し目を見開いたあと、実に楽しそうに笑った。「そんなに俺が好きか」と言うから頷くと、一緒に風呂に入って甘やかしてくれて、食事をして、警察が来た。何もかもをそこに残してきたから当然だ。むしろ時間が掛かったほうだと思う。

 指にちゅっちゅするのを見て、優志朗先輩がその上から更に唇を重ねてきた。最初は指を挟んで、次に、直接。舌が絡んで口の中を丁寧に舐められて、身体全体が戦慄く。いつの間にか逃れた手が、俺の服の中に入り込んで肌を撫で回した。腹を、胸を。とても几帳面に、慎重に刺激を増やして、ゆっくりと快感の海へ浸される。
 やがて身体をずらして、剥き出しにされた肌に顔が寄せられた。吐息がかかるだけで信じられないくらい感じてしまって、耐え切れない声が漏れ出る。目元を手で覆い、ひたすらに舐められ食まれる感触を享受する。
そして、人に久しく触れられなかった場所に手がかかった。


「誰も抜いてくれなかったんだ。ぱんぱんだね。そして相変わらずお綺麗な性器ですこと」


 手のひらがやんわりと嚢を揉む。


「……っ、ありません」
「ふぅん。自分で?」
「黙秘します……っ」


 先に軽くくっついた唇が吸い、舌が無邪気な様子でぺろりと舐める。それから口の中に入れられて、どこまで埋まるんだと思うくらい深く深く飲み込まれた。狭い喉奥、蠢く粘膜の感触にすぐ腰が震えてしまう。こんな風に情けない状態になるのは、先輩が相手だからだ。


「せっかくだから見とけば」
「目にしたら、爆発します」
「すればいいのに。これからいくらでもチャンスあるんだし」


 下品なほどの音をたてて、快感が与えられる。前からこんなに巧かっただろうか。俺がいない間に、誰かが。そう思うだけで、触れた人間を殺して回りたいくらいの嫉妬心に苛まれる。たとえ先輩のほうから誘ったのだとしても。


「余計なこと考えないでもらえますかー」


 どこでばれたか、軽く八重歯をたてられ、痛みに意識が引き戻された。
 いくらでもいけと言った割に、いきそうになると口を離して緩く扱くだけ、波が過ぎるとまた口に銜えて。「びくびくしてる」「ばっきばき」など、楽しそうな声で感想を言ってからかわれているようだ。
 自然と息が荒くなる。汗を掻いて、背中に貼り付くシャツの生地が不快だ。


「そういう、余裕の無い一々がけっこう、すき。いかせてほしい?」
「……お好きに」
「言って」


 はやく、ほらほら、言ってよ。
 悪魔のような声で囁いて、指先でくるりと先を撫でた。


「……いかせて、く、ださい」
「よく言えました。いい子いい子」


 言いながら、口に銜えて吸い上げて、更に後ろのほうにまで指を入れてきて、前後から感じる部分を散々撫で回されて俺は痛いくらいの射精をした。目の奥がちかちかして、くらくらするほどの快感。久しぶりに味わうそれは強烈だった。


「……優志朗、せんぱ」
「何?」
「……頭がバカになりそうなんですけど」
「先にこっちがバカになっちゃうかもねー」


 いったばかりの先端を辿って、びくっと勝手に腰が揺れた場所を重点的にぐりぐり刺激してくる。声も出せずに身体を震わせ、出る、と思ったときには、もう。


「あーあ、せっかく掃除しておいたのにびっしょびしょになっちゃって」


 言葉の割には責めていない口調。先を労わるように舐めて下着を穿かせ、脱力しきっている俺の隣へ寝転んで頭を胸に抱えこむように抱きしめた。硬い胸筋。息をすると、甘い匂いと煙の香り、それから、優志朗先輩の匂いがする。
 射精の疲労感となんかよくわからないものとで頭がふわふわして、腰にすがりつくように腕を回す。髪をよしよしと撫でられてキスを貰って、どうしてか、泣きたいような気持ちになってしまった。



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