佐々木さんとお電話
夜、ご飯を食べてお風呂に入って髪も乾かして、あとはもう寝るだけ。だけど布団の上でスマートフォンとにらめっこ。
電話をしようかやめようか悩みどころだ。鬼島のおじちゃんはいつも唐突におじちゃんを呼び出すから、いつ仕事をしているかわからない。今日は一回も声を聞いていないし、寝る前に聞いたらよく眠れるんだけど。
おじちゃんの声は低くて優しくて落ち着く。本当は寝るまで抱きしめて撫でてお話をしてくれたら一番いい。それから目が覚めたときにおじちゃんの寝顔を見るのも好きだ。無防備に寝ている姿を見られるのは特別な感じがする。
一緒に寝たくなってきた。おじちゃんに会いたい。でも明日も学校だし、おじちゃんと一緒にいると夜遅くまでお話したりしちゃうからだめ。
よし、寝よう。
電気を消して布団に入る。
おじちゃん、仕事かなあ。
家でお酒飲んでるのかな。酔ったおじちゃん可愛いんだよね。太ももに擦り寄ってきて、枕にして寝転んで寝てしまう。可愛い。
この前もそうだった。
「おじちゃーん?」
「んー?」
「寝るならベッド行ったほうがいいよ」
「やだ。この太ももが無い」
お風呂上がりでシャツ一枚、ほとんど剥き出しの太ももに顔を埋めてすりすり。
「シノちゃんはどこも気持ちいいね。すごく好き」
ちゅ、ちゅ、と唇が触れる。どんどん上に行ってシャツの裾をめくり、付け根にも。やぁん、と声を出すとおじちゃんが顔を上げた。その目はいつもより鋭い。
「シノちゃん、しよ?」
ぱったり押し倒され、ソファの上でキスをする。熱い舌、ぺろりと唇を舐められて丁寧に可愛がられた。
思い出すだけで顔が赤くなる。恥ずかしい。たくさんいやらしいことを言ってしまうしやってしまう。おじちゃんの前だから。可愛いって言われると嬉しいし。
やっぱりおじちゃんに会いたいな。ぎゅうってしてほしい。ふわふわで可愛いねって言われたい。
暗い部屋の中に丸い電子音が鳴る。画面には佐々木のおじちゃんの名前。
「シノちゃん? 寝てた?」
低い声が囁くように耳元に。この声が欲しかった。きゅうん、と胸がしびれてたまらない。
「寝てないよ。おじちゃんのこと考えてたから」
「そうなの?」
「うん。いろいろ」
「いろいろ? なにを?」
「いろいろー」
声を聞いたら会いたくなる。でも今日は電話で我慢しておこう。
「今、お仕事?」
「鬼島さん待ち」
「……やっぱり」
「俺が好きでやってることだからね」
「おじちゃん」
「なに?」
「すき」
「ありがとう。俺も好きだよ、シノちゃん」
好きって言ったら必ず返してくれるところが好き。可愛いねって撫でてキスしてくれるところも、酔っ払って太ももに甘えるところも、何もかも好き。
全部、すき。
声を聞いたら安心したのか、それから寝てしまった。朝になったら電話は切れていて、メッセージがひとつ。
「シノちゃん、今日一緒にご飯食べよう。可愛くて無理。会いたい」
これをおじちゃんはどんな顔して打ったのかな?
いつもの、あの顔で打ったのかな。
いいよ、と返事をしてにやにや。おじちゃんに会えるのはいつも嬉しい。
早く夕方にならないかな。
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