お友だち(偽) | ナノ

ナツ、監禁される




けっこういかがわしいです注意。
普段とは違う雰囲気のふたりです注意。
薄暗いかもです。





 ここにどのくらいいるのだろう。
 ナツは亡羊の眼差しで周りを見渡した。低いベッド、本がたくさん入っている本棚、棚の中にはさまざまなDVDがあり、大きなテレビもある。ニュース画面の右上に表示されている日付を見ると、三か月ほど経っているようだった。三か月も、というべきか、三か月しか、と言うべきか、判断がつかない。


「ナツくん、鬼島さんとふたりだけで生きていこうね?」


 アパートに来た鬼島と一緒に料理をして、食べて、風呂に入って、セックスをして、眠気にうとうとするナツの耳元で鬼島が囁いた。そのとき自分がなんと答えたのかよく覚えていない。けれど、多分頷いたのだろう。だから今、この部屋にいるのだ。鬼島邸の一角であろう部屋。誰も来ない。来るのは鬼島だけ。広くていつも同じくらいの温度で、季節感さえ失った。テレビを消してしまえば耳が痛いほどの無音。耐え切れず、いつも点けている。
 壁に寄りかかって座っていたけれどゆっくり立ち上がり、高い高い場所にある窓に手を伸ばす。明るい日光が恋しい。背伸びをすると足元で金属音がした。右足には古典的な鉄の足枷と、長い鎖がついている。壁に打ち込まれた鎖は鬼島がいるときだけ、外された。トイレには問題なくいけるけれど、風呂場にはひとりで行けない。鬼島が来てくれないと。

 跳ねるとじゃらじゃら鳴る鎖。ナツはあきらめて、またその場所に座り込んだ。
 鬼島はときおり「鬼島さんだけいればいいよね」と言うことがあった。ナツが「そうですね」と答えるたびにその思いを強くしていたのだろうか。そしてこのような形になったのであれば、自分のせいでもある。
 部屋にやってくる鬼島はとても嬉しそうだ。食欲がないと言うと心配そうな顔をするけれど、食べると安心したような顔をする。わざとドアを少し開けたままにするのは試されているような気がして、逃げる気にはならない。それに逃げたら鬼島はきっと悲しむ。

 最近、とても眠い。
 ナツは膝を抱えて、眠りに落ちた。


 目を覚ますと、鬼島がいた。身体を丁寧に愛撫されている最中だったらしい。
 ベッドの上に運ばれていて裸にされており、手首が縛り上げられてベッドにつながれている。暴れると摺れそうな紐の感触は、ここに入れられた当初散々味わった。


「ナツくん、おはよう」


 相変わらずの、口元の笑み。目は冷静にナツのことを見下ろす。逃げる気はあるか、反抗する気はあるか、見透かしでもするように。


「おはようございます、鬼島さん」
「よく寝てたね」
「はい……」


 まだ覚めきらない頭で、ゆるやかに頷く。手のひらが右頬を包み、口付けが降る。優しいそれに思考は総て拭い去られた。ただ、快楽を受け入れるためだけに切り替わる。
 この部屋で一日中、行為に及ぶこともあった。鬼島はナツをどろどろにさせ、何もわからないようにさせたいかのようだった。

 ぐちゅ、ぐちゅ、と水音がする。口に入れられた健やかな硬い性器を舐められ吸われ、達しそうになると口が離され手で扱かれる。ナツは腰や太ももを震わせ、とろけた顔で涙を流す。「気持ちいい?」鬼島に尋ねられると何度も何度も頷いた。
 鬼島は口でするのが好きなようで、必ず長い時間の愛撫を加えてくる。下半身が溶け出しそうな快感に、みっともない声を抑えられない。

 結局出すこともできず、びくびく震えるだけの身体を鬼島は満足そうに見下ろした。それからローションを胸の辺りに掛けて、ねっとり撫でる。ぼうっとする頭、鼻に届いた匂いには嗅ぎ覚えがある。あったかくなるやつだ、と、鬼島に涙を吸われながら思った。あったかくなるだけでなく、痒いようななんとも言えない感覚になって、触ってもらわないといられなくなる。

 やはりすぐにその感覚がやってきて、ナツが身体を捩って悶えるのを鬼島は楽しそうに見下ろしていた。ローションが追加され、身体を流れる感触にさえ喘ぎ声が出てしまう。


「きしまさん、もう、やだ」


 か細い声でナツがお願いすると、鬼島は笑って頭をなでた。


「もうちょっと我慢しようね」
「やだ、や、です。もう、や」
「いい子だから」
「やだぁ……」


 ぐずぐずと鼻を鳴らして子どものように泣き出してしまったナツ。鬼島は「仕方ないなあ」と言いながらも嬉しそうにナツの胸に手を伸ばした。立ち上がって硬く尖ったそこを指で挟み、優しく慰めるように擦る。ナツは泣きながら押し付けるように背を逸らし、刺激を欲しがる。


「もっと?」
「ん、もっ、と」
「ぎゅうってしてほしいの?」
「ん」


 爪をたてて引っかくようにすると、びくびく腰を揺らし、肩が跳ね、気持ちよさそうな声を出す。抑える気はないようで、ひたすら自由に喘いでいた。もはや快感しか見えていないような、涙でいっぱいのぼんやりした目。甘ったるい声を聞きながら鬼島は哂う。
 ナツのアパートで、眠っているナツの足に枷を嵌めたとき、喜びで背中がぞくぞくした。
 ナツを誰の目にも触れさせないで自分だけのものにしたい、という長年の願いが叶ったのだから嬉しくないはずが無かった。かわいいナツ。快楽でぐちゃぐちゃになって、何も考えないで、ただ俺だけを見ているナツ。そう思うと、喜びで鬼島の胸がいっぱいになった。


「かわいいよ、ナツくん。大好きだよ」


 あまり反応を示さなくなったのは、自分の存在が当たり前に刷り込まれたからだと思っている。鬼島はナツの身体を抱き上げひっくり返して膝を立てさせた。ナツをベッドに運んでから入れたパールのピンク色したリング部分だけが、形のいい尻の狭間にある。


「きしまさん、とって、」
「ん? 取ってほしいの?」
「とって、いれて」
「何を?」
「きしまさんのちんちん、いれてぇ」


 腰を振って、涙を流しながら振り返って見上げてくる。手首を解いてやると、立ち膝の鬼島のほうをもたもた向いてベッドに座り、ぐす、とやりながら手でたどたどしく鬼島のベルトを外す。


「かたい……」


 手のひらでそこをさすり、少し嬉しそうに言った。
 ナツの頭は、身体の中に宿ったような不愉快な熱気をなんとか発散することにしか向いていない。腰の辺りが甘ったるく重たくて熱くて、鬼島ので腹の中を突いて擦ってもらえたらそれが解消され、満足できることを知っている。チャックを下ろすと、鬼島の指が胸を再びつねり上げた。手を止めたり震えたりしながら、がちがちに硬くなっているそれを取り出して、先に口付ける。あむあむ、口に入れて不慣れに舐めたり吸ったり。そのたどたどしさがたまらなくいい。自分しか知らないのだと言われているような気がするからだ。


「もういいよ」


 しばらくそのぎこちない口淫を堪能して、口から引き抜く。唾液でぐちゃぐちゃに濡れたそれをうっとり見つめたナツは、ごろりと寝転んで自分で両膝を抱えた。


「いれて……いっぱい、おくまで、して」
「えっちだねぇ」
「あつい、の。むねも、おなかも」
「可哀想に」


 リングに指を引っ掛け、ぐいと引き抜く。その衝撃で勢いの無い射精をしたナツは声にならない声を出して、でも物欲しそうな目で、鬼島を見る。


「いれて、はやく」
「はいはい」


 ひたりと、尻に先端をくっつけて一気に押し込む。先ほどは引き抜かれ、今度は奥まで押し込まれ、身体を硬直させて目を見開く。鬼島はすぐに乱暴なほどの律動を開始した。ナツの膝裏を掴んで、ほぼ真上から奥まで突き上げる。揺さぶられることしかできないナツはシーツを掴み、荒く呼吸をしている。膝を更に押すと胸に触れ、声を上げて中を更に締め付けた。

 頭が溶ける。身体が痺れる。
 深海に沈むような恐怖、にも似た、繰り返し襲う快感。真っ暗な中の波。



 がくん、と、身体が震えて目を覚ました。
 蝉の声が聞こえる。身を起こすと蒸し暑い、住み慣れたアパートだった。夕焼けのオレンジ色が部屋を染めている。
 夢を見ていたような気がしたが、すっかり忘れてしまった。鬼島が出てきたような気がしたのだけれど。じっとり滲んだ汗を腕で拭い、風呂に湯をはる。


「ナツくん、いるー?」
「あ、鬼島さん……」
「ただいま」


 鬼島は夏でも変わらない白黒の装い。汗をかいている気配も無い。右手に袋を持っている。


「ナツくん、おいしいひき肉貰ったから、一緒にハンバーグ作って食べよう」
「ハンバーグ……!」
「そのあとは触らせてね」


 ナツは真っ赤になり、頷きも首を振りもしなかった。その様子を鬼島は微笑んで見つめる。後ろに回したままの左手のそれが、しゃり、と金属音を奏でた。



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