お友だち(偽) | ナノ

無題の関係 6


 

蓬莱(ほうらい)
談(だん)





 今日も仕事が終わってからまっすぐ談くんの家に帰った。ご飯を食べてお風呂に入って、どこもかしこも狭いせまいところなのに自分の大きな部屋にいるよりずっとリラックスできる。
 Tシャツに黒のスウェット長ズボンで、壁際に設置されたベッドでごろごろしながら次のドラマの原作本を読む。やがて、お風呂上りの談くんがテーブルとベッドの間に座った。白っぽい金髪からしずくが滴って、肩にひっかけたタオルに染み込む。


「風邪ひくよ」
「あ? 別に大丈夫だよ」
「だめ。ドライヤーは?」
「ここー」


 髪をやさしく拭いて水分を取り、指を差し入れながらドライヤーの風を当てていく。するするとしている柔らかな髪。


「談くん、こんな派手な髪色してたら溶けちゃうよ、そのうち」
「あ? あー、そしたら刈るわ。お前何読んでたの」


 手に取った小説をぱらぱらする。談くんは見た目に似合わず本を結構たくさん読んでいる。周りの人の影響だと言うが、車の中にも常に何冊かあったりして、けれどスペースが無いからと買ってはいないよう。借り物ばかりなのだそうだ。
 ほわほわ温かく乾いた髪に冷風を当て、梳いてスイッチを切る。まっすぐな髪は項あたりの襟足などが紫だったり赤かったり。


「ありがとな」


 本をテーブルに置いてドライヤーを片付ける。それから俺を見上げてきた。明るい色合いの丸い目。うっと後ずされば壁に背中がついてしまって、談くんがにじり寄ってくる。


「するか、一発」
「その言い方……」
「なんだよ、じゃあ……」


 するりと俺の肩へ手を置き、耳へ口を寄せてくる。お風呂上がりの暖かな匂いがして頭がくらくら。


「えっちしよ……?」


 いつになくかわいらしいっぽいような声。わざと出していることがわかるのに、それはそれでときめかされてしまう。いけないと思うのに談くんに触られて誘われると簡単にそういうのに、身体がなっちゃう。
 そのまま耳にキスをして、食まれて、冷たいような温かいようなぞわぞわが背中に走って肩がこわばる。そうするとなだめるみたいに撫でてくれて、右手がそろりと太ももを撫でた。


「だだだだ談くん……本当にするの」
「嫌か」
「いや……っじゃないけど……」
「優しくするから大丈夫」


 談くんはいつもそう言って、遠慮なく俺のズボンの中に手を差し入れ、中から引っ張り出す。


「なんだよお前パンツはいてねーじゃん。やる気だな」
「ちがっ……」
「よーしよしよし今日もでかいなーどうもーお久しぶりですう」
「そこに向かってあいさつしなくていい……」


 思わず両手で顔を覆う。その間にも談くんは元気になりつつあるそこに伏せて両手でなでなで。あったかい手に優しく揉まれて撫でられて、大好きな人にされてると思うと簡単に。


「びっきびきだなー」
「ひっ」


 先端をふっと吹かれて身体を揺らしてしまう。くくと笑い声が聞こえて、温かな濡れたものがぺたりと先端に触れた。舌だ。それがちろりちろり短い間隔で舐めたり、下から上まで舐めあげたり。段差があるところまで口に銜えられて、そこからは奥まで迎え入れられてしまった。喉奥でぎゅっと締め付けられてとても気持ちいい。舌が絡みついて、唾液がたっぷりまとわりついて、あ、と思ったら。


「だんくん……っ……だんくん、だんくん、あの、ああ」
「……早くね?」


 べちょべちょに濡れた性器を上下に擦りあげられる。視線を感じる。久しぶりだったせいでたぶんちょっと出た。何か出た。


「泣くなよ」
「泣いてないもん」


 恥ずかしくて爆発しそうだけど、泣いてはいない。顔から手を外すと談くんが身体を上げてちゅっとキスをしてくれた。キスするときにいつもちゃんと目を閉じるのかわいい。唇を食むと談くんは面白そうに両端をつりあげて、お返しのようにもぐもぐしてくる。もぐもぐしながら、割と限界のそこを揉み揉み。


「だん、く……出ちゃうからもうやめてください……」
「そうかー。出すんだったらオレの中のほうがいいよなー」
「うう」


 いいよ、と言って、何を気にする様子もなくTシャツを脱ぎ捨てる。その下には下着もつけていなくて、一枚脱いだだけで全裸になった。細くて、でもあちこちに筋肉がうっすらついていてきれいなからだ。


「どうやってしたい? 座ったままする? 寝転んでする?」


 談くんの問いかけにのろのろと動いてベッドの下のほうへ座る。それで何かを察したのか仰向けに寝転んだ。その姿だけでちょっと出てしまいそうだ。


「舐めて」


 小悪魔そのものの、美しくかわいらしい魅力的な笑い方。同時に、はい、と、足が差し出される。ほっそりとしていて人差し指のほうが親指よりも少し長い。右足にはシルバーとゴールドが絡み合ったような繊細な様子のアンクレット。よく似合うけれど自分で買ったのか誰かにもらったのか、聞くことはできない。誰かにもらった、と言われたら引きちぎってしまいそう。そんな立場でもないのに。

 暑くなってきてシャツもズボンも脱ぎ捨て、足を手に持ってつま先へ口づける。爪はきれいな黒に染められ、中指だけは紫色。談くんは赤が好きなのか紫が好きなのか黒が好きなのか。そして自分で塗ったのか誰かに塗ってもらったのか。少なくともこの部屋にマニキュアはない。
 指の一本一本に口づけるのを、寝転がったままの談くんがとても楽しそうに見ている。右が終われば左、足の甲にも口づけて、なんだか談くんに完全に支配されているみたいでどきどき、する。頭の中が談くんと気持ちいいことでいっぱいになってしまう。
 どきどき、どきどき。高ぶると、談くんにむしゃぶりつきたくなる。


「談くん、談くんも、興奮してる?」
「しないわけねぇじゃん。すっげーしてるよ」


 ふふっと笑った談くんが、細い足を開いて俺の身体に絡みつかせる。


「早くしろよ。うずうずさせて待ってんだから」


 どこを、と聞くまでもない。引き寄せられるままに覆いかぶさり、肩のあたりへ手をつく。


「あ、ゴム」
「いいよそんなもん。早くしろ」


 急かされて、困りつつお尻に指を。くちゅりと濡れたそこはもうすっかり柔らかくて、談くんが準備してきたことを考えると毎回のことながらひどく興奮する。早くしろと言われてそのまま、腰を進めた。


「あー、すっげ……」


 呟いて目を細める談くん。指で薄く色づいた胸をいじると簡単に尖らせた。今日はピアスがない乳首。いじると中が震えた。ぐちゃぐちゃに濡れていて熱くて、そのまま出してしまわなかった俺を褒めてほしい。でも褒められたら褒められたで恥ずかしくてたまらなくなるだろうけど。


「談くん、気持ちいい……とける……」
「溶ける前に、このでかいのでガンガンやって。それからだったらなんでも構わねぇから」


 ゆらりと腰を揺さぶられ、なんとかこちらも腰を動かし始める。気持ちよさにあえぐ談くんの姿も好きだけど、なんだか強い罪悪感もある。大好きな人を自分の欲で汚しているような気がして、中で出してしまえばなおさらだ。
 気持ちがいいけど、気持ちよくなればなるほど、泣きたくなる。


「……蓬莱、いっつも思うんだけどさあ、お前もっといい顔できねぇの? オレとすんのがそんなに嫌か」


 頬に手のひらが触れる。嫌じゃない。でも、少し辛い。
 首を横に振ると談くんは仕方なさそうに笑う。


「お前は素直だな、本当に」
「……談くん」
「オレだけが気持ちいいわけじゃないなら、それでいいけど」


 はあ、と息を吐く。罪悪感に罪悪感。
 談くんが好きだって言っちゃえば、楽になるのかな。でも、言えない。もし談くんがどこか行っちゃったら嫌だから。


「談くん」
「んー?」
「ごめんね」
「……別に」


 キスをして、続きを。
 談くんとのえっちはいつだって気持ちいいけど、いつもほんの少し悲しくてつらい。



お友だち(偽)TOPへ戻る

-----
よかったボタン
誤字報告所



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -