寒い夜に
夜中、物音で意識が浮上した。かたかたぎしぎし傍まで来て座る。衣擦れの音、そのあとに頬に触れた柔らかな唇。
「……冷たい。この家寒すぎ」
頬に添えられた手のひらは大きく、すっかり馴染んだ体温がじんわり頬に伝わる。
目を開けるとほぼ同時に長い腕が上半身を抱き上げた。白いシャツに頬を寄せ、擦り寄る。温かくてとても心地良い。
この先に待っていることはわかっている。
そして予想通り、いつもの手順でキスをされ、長袖Tシャツの裾から手が入り込んできた。
「ナツくん、ちょっと痩せたんじゃない?」
瞼に唇を受けながら、小さく首を横に振る。そうかな、と呟き、指先がいたずらに胸で遊ぶ。多分普通の男子ならここをいじられて出すはずないだろう声が漏れ出て、鬼島さんが笑う。
「ここ、好きになった?」
弾かれたりつままれたり擦られたり、甘い刺激は背中を伝い、腰へ。
鬼島さんがくれる快感は怖い。最初はこうやって少しなのに、最後には訳がわからなくなるくらい大きくなって、意味のない声を漏らし続けるだけになってしまうから。
そうなると目の前にいるのが誰なのかすらあやふやになりそうになる。もしくは快感の淵にひとりで立たされているような不安。
「きしまさん」
「ん?」
「……ぎゅう、って」
ひとりは怖い。それを教えたのは鬼島さんだ。ずっと知らなかったのに。
鬼島さんは微笑っておれの身体を布団の上へ横たえ、覆い被さってくる。片手だけをしっかり繋がれた。
「ぎゅ、ってするのは、もうちょっと我慢して。いいこだからできるよね」
子どもに言い聞かせるような声音。こくりと頷くと、いいこ、と額にキス。
「寒いから、今日は着たまましよっか」
言って、布団の中で器用におれを高める。甘やかして撫でて追い立てて。やっぱり怖くなって何度も、鬼島さん、と呼んだ。
そのたびに鬼島さんは微笑う。
「ナツくん、可愛い。怖いの」
涙をなめ取り腰を揺らす。それに合わせるように声を漏らしてしまい、過ぎる感覚に泣く。変に気持ちいい。ぐりぐり押されると精液じゃないものが出そうで戸惑い、子どもじみた泣きじゃくり方。すると動きが緩やかになった。
「ナツくん?」
「こわいです……」
「怖くないよ。気持ちいいんだよ」
「やだ……っ」
「わかったわかった。ごめんね? 鬼島さんが悪かったよ。もうしないから」
角度が微妙に変わった。突かれる場所が少し外れる。すると気持ちよくてたまらなかった。怖くない、酔わせるような快感が身体をゆっくり侵食する。
「ナツくんは素直で可愛いね。鬼島さんのナツくんだから、鬼島さん以外となかよくしたら、だめだよ」
揺さぶられ、拡げられ、鬼島さんの肩にしがみついて壊れたように声を漏らす。そんなおれを鬼島さんは微笑って見ているような気がした。
寒さなど感じない。むしろ暑い。
鬼島さんの唇も、やけどしそうなくらいに熱かった。
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