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 王子と坊主 3-2*


 真っ白の敷布団へ座り、もじもじ。向かいに座った一梗は何のためらいもなく服を脱ぐ。裸で触れ合ったほうが気持ちいい、との理由で、一梗は割と早めに脱ぎ去ってしまう。恥ずかしがっている自分が妙な気がして、おずおずとポロシャツとハーフパンツを脱いだ。
 背中に、一梗が抱きついてくる。肌がふれあい、確かに心地がいい。特に一梗は、身体の表面がいつでもひんやりしている。
 くっついている幸せに浸っていたが、後ろから伸びてきた手が突然、下着の下で窮屈そうにしているそれを鷲掴みにした。驚きで身体が跳ねる。


「硬くなっているな」
「一梗のせいだもん」
「そうだな。俺の手で、こうなったんだ」


 どこか嬉しそうに言って、優しく慰めるように手が動く。強くなったり、弱くなったり、上や下、好きなように撫で回される。もどかしい刺激に我慢が出来なくなり、真沙美は自分で脱いだ。元気よく跳ねたそれを覗き込み笑った後、一梗は四つんばいで前へ回りこむ。


「かわいいな」


 先をちょこちょこと指先で撫でると、液体が糸を引く。それを見て恥ずかしそうに目を逸らし、しかしぱっくりと銜えられると腰を跳ねさせて一梗の後頭部を見た。


「いっ、きょ」
「ふ?」
「……っ」


 吸われて舐められて、けれど達することはできない。真沙美の身体はそのように変えられてしまったからだ。前を刺激され快感を得て射精したくなっても、後ろが疼いて止まらない。
 下半身をぐるぐる熱が巡る。はぁっと息を吐き、気を紛らわせるように胸の辺りを弄り始めた。淡い色の乳首を太い、様々な痕のある指でつまんで引っ張ったり撫でたり。一梗が上目遣いにその様子を見ている。口に自分のものを銜え、胸を弄るいやらしいところを上目遣いで見られている。そう思うと、濡れるはずのない場所が濡れるような錯覚すら覚えてしまう。
 こんな身体になってしまったのも一梗のせいだ。
 ぐすっと鼻を鳴らした真沙美は、それでも快感を追うことをやめられずに手を動かし腰を揺らす。その様子に一梗は満足感を覚える。このようにしたのは自分だと思うと嬉しい。内腿を撫で、熱心に施したあと口から抜くと、片手でそれを撫で回しつつ、更に下へ舌を伸ばした。陰嚢を口に含み、吸い上げ、人指し指を沿わせる。つつ、と。


「はいごろーん」


 肩を押し、柔らかな布団の上へ真沙美を横たえさせた。すっかり物欲しそうな目になった恋人の眼鏡を外し枕元へ丁寧に置いて、頬に口付け。むっちむちの身体を撫でて、胸の辺りに頬を寄せる。


「あー、まさの身体は最高だな」
「……一梗」
「うん?」
「一梗の、その、おちんちんも舐めようか」
「……いや、いい」
「なんで? オレも、何かしたい」
「なら、まさの中に入れてくれ」


 一梗の手には収まりきらない巨尻。柔らかく、引き締まっていて気に入っている部分のひとつ。気に入らないところはひとつもないが。

 身体を反転させ、恥ずかしそうに腰の辺りを持ち上げる真沙美。目の前に晒されたのは、屈強な身体つきからは想像もできないようなその部分。明らかに使用済みといった感じで、縁がぽってりと膨らんでいる。興味に任せ、太い物から細い物までさまざまなものを出し入れしてきたせいだろう。
 押し開いた尻たぶに口付け、その部分を舌で可愛がる。それだけで、まるで達してしまいそうなほどの声を出してシーツを硬く握り締めた。太ももが震える。撫でながら舌を奥へ奥へ押し付けた。外は硬いが、中は柔らかい。蠢かせると甘ったるい声を出した。さきほどとは異なり、我慢するつもりはないようだ。顔を埋めて、甘い声を出して、身体をくねらせて、実にいやらしい。
 その様子を指を入れ、中で動かしつつ見ていた。恋人が喘ぎ乱れる様はたまらない。一番感じるのだろう部分を掠めてみたり、押してみたり、敏感に反応する。
 もっと、とか、早く、とか言われると、下半身にずんと来る。しかし一梗の手は止まらない。中指と人差し指、それから薬指。三本がぬるぬると出入りするようになったその部分はいかにも情熱的に誘った。


「まさの口は上も下も正直だな」
「お……っさん、ぽい……っ」
「ぬるぬるで柔らかくて素晴らしいぞ」
「んっ……じゃあ、もう、きてよ……」
「ああ」


 布団の下に置いてあった避妊具を取り出して性急に着け、入り口に宛がい奥まではめ込む。それからすぐに出し入れを行う。一梗の、真沙美に比べれば細い腰が何度も何度も尻たぶにぶつかって乾いた音を起てた。絡み合うような真沙美の淫らな声。低く掠れていて、突かれても引き抜かれても一際強くなる。


「真沙美」


 覆い被さってきた一梗の身体は変わらず冷たい。熱くなった真沙美の体温にも馴染まずその感触が今は遠く感じる。
 まるで奥に奥に入り込むかのように強くなる律動。内臓が押し上げられるような感触がたまらなく気持ちよく感じるようになったのはいつからだったろう。

 中学校に入学して、同じクラスになって、変わった男だと思っていた。まだ五分も話さないうちに「恋人になれ」と言ってきたのだから。振り回されたまま今日まで来ている。心も、身体も振り回されっぱなし。こんな浅ましい身体にされて、でもそれは自分が拒否をしなかったからで。
 耳の近くで真沙美、と呼ばれると、背筋がぞくっとする。けれど恥ずかしい声で一梗、と呼ぶと、明らかに反応を示すからお互い様のようだ。
 明るい部屋の中には真沙美の声と、一梗の息だけ。
 それが途切れたのは、しばらく経ってからだった。


「まさはかわいい」


 散々後ろを擦られ何度か吐精して、疲れきった身体をうつぶせのままぐったりしている真沙美。下半身の辺りが濡れていて気持ちが悪いが動きたくない。そんな真沙美の背中やら首やら頭やら、圧し掛かったままちゅうちゅうとキスをしている一梗。やがて全裸でふたり折り重なったまま眠ってしまい、目を覚ますと夕方だった。


「課題やる気でない……」
「明日、俺が手伝ってやる」


 一梗にぴったりされたまま夕飯を食べ風呂に入り、ちゅっちゅされつつ新しいシーツの張られた布団で眠った。


「……誰がシーツ換えてくれたの」
「お手伝いさん」
「……恥ずか死ぬ……明日どんな顔したら良いの」
「笑顔でおはようじゃないのか。基本だぞ」
「……おやすみ」
「ああ。おやすみ。夢でも会おうな」
「現実だけでいい……」




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