有澤と満和 クリスマスの真夜中
仕事を終え、家に着いてスマートフォンを見る。するとそこに高牧くんからのメッセージが入っていた。
「帰る頃、連絡ください」
現在、クリスマスが過ぎた二十六日深夜十二時。さすがに高牧くんは寝ているだろうと思いつつ、帰った、と送信。
すると、部屋の外の廊下の雨戸がぱんぱん、叩かれる。
まさか
戸を開けるともこもこと厚着をした高牧くん。慌てて抱き上げ、暖かな書斎へ。鬼島さんちとうちは近いとはいえ、今晩は冷える。身体があまり強くない高牧くんにはよくない。
「有澤さん、プレゼント、ありがとうございました」
ここ数日はあまり話もしてなかったし、触ることもなにもなかった。久しぶりに高牧くんを膝に抱っこして、ほわほわあたたかで小さな身体だと改めて思った。細くはないが、頼りないに変わりはない。
「高牧くん、すまなかった」
「ううん、いいんです。もう気が済みましたから」
真っ黒な髪が生えるつむじ。キスをするともそもそ動いて俺の胸へ顔を寄せる。
「……有澤さんは、他の人に触っちゃだめです」
「うん」
「知らないとこでたくさんお酒飲むのもだめです」
「ああ、わかった」
「鬼島さんと佐々木さんには気をつけてくださいね」
「本当にな……もう二十年近く感じてる……」
「有澤さんが撫でていいの、ぼくの頭だけです」
「そうか。嬉しい」
さらさらと心地良い高牧くんの髪を久しぶりに撫でた。まだ脱いでもいないスーツ、外していなかったネクタイに、高牧くんの指がかかる。
「いっしょに、寝たいです」
「そうだな」
「お風呂、入りますか」
「高牧くんは入ったろ」
「……見てます」
ぴったりくっつく高牧くんを抱っこして、風呂場へ。重みに安心する。
いいクリスマスだ。聖なる夜はもう過ぎてしまったけれど、まだまだ、夜は続く。ふたりの夜が。
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