嘘を吐く[1/3]
今日はなにかがいつもと違ったんだ。
私がなにをしたというんだろう。
一年は組と楽しく遊んでた。 そうしたら、い組の子二人に泣かれた。 私はなにもしちゃいない。 そもそも彼らとはなんら関わりがないのだから。 伝七や左吉の近くにいるのは何度か見かけたことがある。 でも実際に話したのは今日が初めてだった。
「雅、先輩、っんで、な、で、は組なんかと遊、ですか、うぇ…っく。」 「なんでっ、ふっ、雅せ、ぱいは、ぼくたっ、のこ、み…ってくれないんで、すかぁ、ひっう、かはっ。」
なんでと言われても困る。 あんなに頑張ってるのに、とひくひく嗚咽を漏らしながら訴えられた。 時々うぇぇ、と苦しそうにしていた。 なんだ胃の中身逆流しそうなのか? それとも過呼吸か?
は組の子に二人の名前を聞いて、呼んで背中を擦ってやったら、泣きつかれのかくたっとした笑顔になった。
ちゃんと見てるよとその場しのぎの嘘を吐いた。
生物小屋の前で三年生が倒れてた。 そこには毒を持ったのがたくさんいるから危ない。 急いで駆け寄って抱き起こした。 うっすらまぶたが持ち上がると、彼の目は私をとらえた。 はぁはぁ、と浅い呼吸を繰り返す唇は"やっぱり来てくれた"と動いた。
「…っ雅せ、んぱい、は、ぼくが毒を持ったか、ら来て、くれ、たんですね。」
なにを言ってるんだこいつは。 毒を持った? 人間は毒を取り込んだら命の危機だろう。
辛そうに、幸せそうに、笑って目を閉じた。 待て。死ぬなよ。いくらなんでも死なれたら目覚めが悪すぎる。
医務室に連れていけば、命に別状は無いと言われた。
部屋を出ようとしたら好きだと寝言かなにかで囁かれたのが聞こえた。 返してやれと言われ、私も好きだと嘘を吐いた。
もう部屋に戻ろうか。こんなところ、忍たま長屋にいてもいいことなんて起こらないだろう。
医務室行ったから不運でもうつってなきゃいいけど。
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