五年生がゲームをやろうとする[1/1]
「らいぞぉぉお!!マ●オやろう!」
「……え?三郎ってゲームやんの?」
「デビュー戦だ。」
スパーン、と軽快に襖を開けた三郎は、自室で本を読んでいた雷蔵にこれ見よがしにソフトをちらつかせ、まとまりつく。
「ゲーム機持ってきたよー。」
開けっ放しにされたままの襖から顔を出す、見知った三人の彼らの友人たち。
内一人は勝手にコンセントを繋ぎ始めた。 よし!やろうぜ!と歯を見せて笑えば、これ四人までしかできなくね?と突っ込まれていた。
「ていうかなんで室町にテレビがあんのゲームがあんのマ●オがあんの。」
「突っ込んだら敗けだぞ雷蔵。」
雷蔵はそんなもんか?と思ったが、自分の横で人数について揉めているようなので、そちらに耳を傾けることにした。
「だからさ、一人余るんだって。」
「誰かがやんなきゃいいだろ。」
「なにそれつまんねぇ。なら言い出しっぺの三郎が抜けろよ。」
「やだ!!」
八左ヱ門と三郎のリモコンの取り合いに痺れを切らした雷蔵はリモコンを引ったくった。
「じゃあ、僕と三郎で一つのリモコン使おう。それならいいでしょ?」
「らっ、雷蔵!好きっ!今ならお前の子を孕めそ、ぶっ!?」
「誤解招くようなこと言わないでくれる?ぶん殴るよ。」
もうぶん殴ってます雷蔵さん! 八左ヱ門はそういい掛けたが、自分に被害がくるのを恐れてそっとその言葉を心の奥にしまった。
「あ、そうだ。ぼくらだけはなんかムカつくから、お前らも二人でリモコン一つね。」
「……理不尽すぎる。」
「うん?」
「……兵助、組もうか。」
「あ、うん。」
「え、ちょ、おれは!?」
「委員会の後輩にでも頼めよ。」
「あいつらゲームって柄じゃねぇもん!孫兵に一平に孫次郎に三治郎に虎若だぞ!?」
ぐさりと棘のある雷蔵の言葉に八左ヱ門が噛みつく。
「先輩の頼みくらい聞いてくれるだろ。」
「そーだよー。」
い組二人にそう言われた八左ヱ門は、だって断られ方とか想像つくもん!と嘆いた。
孫兵は毒虫の世話だろ?一平は勉強で忙しいだろ?孫次郎は先輩の部屋に行くのはちょっと…、だろ?三治郎は兵太夫とカラクリ作りだろ?虎若は筋トレとか火縄銃だろ?
指を折り曲げながら呟く八左ヱ門からは哀愁が漂っていた。
「八左ヱ門…。」
そう優しく呼び掛けた勘右衛門の声は悲しいかな雷蔵によってかき消された。
「いいからペア見付けてきなよ。」
「………はい。」
結局ゲームやらないのか、と呟いたのは豆腐大好きな兵助だった。 彼は級友、不破雷蔵のことを秘かに時期暴君と思っている。
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