猫の日(五年ver.)[1/1]



「勘ちゃん知ってた?今日、巷で噂の猫の日なんだって。」

「巷で噂なの?」

「いや、そのへんは知らない。」

「ちょ、ちゃんとしてよ兵助。」

「ごめんね勘ちゃん。」

「いいよ。それよりなんで猫の日?」

「にゃんにゃんにゃんだからだよ。」

「にゃんにゃんにゃんだからかぁ。」


え、なにこいつら。なにイチャイチャしてんの。
うっぜぇまじうっぜぇ。リア充爆発しろ。


「三郎うるさい。」

「あれ、口に出てた?」

「丸っと全部出てたぞ。」

「きゃーやだーせくはらー。」

「どつくよ?」

「ごめんなさいっ!!」


最近、常々思う。わたしの土下座すっごい綺麗。

雷蔵が怒るのがいけないんだ。だって雷蔵ったらすごく怖いんだ。
まぁ、元凶はわたしだけどな。


「胸張ることじゃないだろ。」

「声に出てたか?」

「うん思いっきり。」

「まじかー。」


どうやらわたしは思ったことがすぐ口に出てしまうらしい。
気を付けないとな。

隣でなにやら悩み始めた雷蔵を見たら、ブツブツとなにか声に出している。

気になったので、耳をすませて聞いてみることにした。
にゃんにゃんにゃんか、猫の日ねぇ、にゃーって鳴くもんなぁ、うーん、エトセトラエトセトラ。

雷蔵!君は一体なにを悩んでいるというんだ?


「よーし、決めた!」


雷蔵がいつにも増していい笑顔で、弾む声でいうものだから、肩がびくりと跳ねた。
イチャイチャしていた勘右衛門と兵助、静かに見守っていた八左ヱ門も言うまでもない。
こういうときの雷蔵はろくでもないことを思い付いたときなのだから。


「お前ら全員語尾ににゃん、ってつけろ。」


なんという暴君、いや雷蔵様。
命令なんですねわかりまし…、わたりたくありません。
誰か雷蔵を止めて!


「ら、雷蔵、いきなりどうしたんだ?だいたいそんなことして誰が喜ぶんだよ。」

「うるさい黙れモップ僕がルールだ。それはアレだよ、五年厨のお姉様方だよ。」


一瞬でも八左ヱ門頑張れ頑張ってくれもっとやれ!と思ったわたしを咎めたい。

ていうか、え?五年厨て、え、確かにわたしたちは五年だけど。


「えーと、はっちゃんはなに嫌がってんだ?にゃん、ってつけるだけだろ。ね、勘ちゃん。」

「うん、別にいいと思うよ。」


黙れ天然共!い組のくせになぜ天然なんだ!


「ほら、僕に噛みついてる暇があるなら二人を見習いなよ。」

「う、あ、三郎!三郎だってにゃんは嫌だよな?」

え、そこでわたしにふる!?
だから八左ヱ門は八左ヱ門のままなんだよ。


「勘ちゃん豆腐食べたいにゃーん。」

「あ、じゃあ食べに行く?おれ付き合うにゃん。」

「行く行く!支度してくるにゃん!」

「おれも行くにゃん。」


あ、あいつらちゃっかり離脱しやがって。
なんだかんだでぬかりないから嫌なんだよ、い組は。


「三郎も、嫌なのかにゃん?」


あぁっ、そんな悲しそうな顔しないで雷蔵!


「全然!雷蔵が楽しいならわたしも楽しいにゃん!にゃんにゃんにゃーん!」

「三郎っ!」


すまん八左ヱ門。
わたしは友情よりも雷蔵の笑顔をとる男なんだ。悪く思うなよ。


「三郎の裏切り者!あーもうわかったよ言えばいいんだろちくしょおおおぉおお!!」


八左ヱ門は涙を流しながらこれで満足かと言いたげに鳴いていた。




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